2021年11月22日月曜日

まともな根拠なしに「ワクチン3回目が必要」と説く日経 滝順一編集委員

日本経済新聞の滝順一編集委員が22日の夕刊ニュースぷらす面に書いた「ニッキィの大疑問~ワクチン3回目なぜ必要? コロナ第6波に備え 抗体活性化」という記事は無理がある。「ワクチン3回目」が「必要」との前提がそもそも引っかかるが、だったら「必要」と言える根拠をしっかり示してほしい。なのに記事には、それが見当たらない。

大阪城

どうして3回目の接種が必要になるのですか」という問いに対する滝編集委員の答えを見ていこう。


【日経の記事】

ワクチンを接種すると、人間の体内で「中和抗体」が作られます。中和抗体はウイルスの感染力などを抑えるタンパク質で、これによりウイルスへの感染が抑えられます。

しかし、接種してから時間がたつと、体内の中和抗体は減ってしまうことが報告されています。すでに2回接種していても、半年以上が過ぎると、ワクチンの効果が一部薄れてしまうのです。

3回目の接種をすれば、中和抗体は大きく増えることがわかっています。冬は空気が乾燥し、室内での活動も増え感染リスクが高まる傾向にあります。流行の第6波への備えを怠ることはできません。

マスク着用など、基本的な感染防止策は引き続き必要です。そのうえで高齢者や、基礎疾患があってリスクの高い人などは3回目の接種が望ましいと考えられます

ただ、ワクチンによって活性化される体の防御システム(免疫)は、中和抗体だけではありません。2回目までの接種でできた中和抗体は薄れても、ウイルスを退治する免疫細胞などの働きは残っており、全くの無防備にはなりません。抗体が減っても、入院や重症化を防ぐ効果は持続するという報告もあります


◇   ◇   ◇


疑問点を列挙してみる。


(1)薄れてしまう「一部」とは?

すでに2回接種していても、半年以上が過ぎると、ワクチンの効果が一部薄れてしまう」から「3回目の接種が必要」というのが滝編集委員の答えだ。こんな漠然とした説明しかできないのか。

一部」とは何を指すのか。そして、どの程度「薄れてしまう」のか。それが分からないと「3回目の接種が必要」かどうか判断できない。そこが記事の肝なのに、さっさと「いつごろ3回目の接種が始まりますか」という話に移っている。無責任が過ぎる。


(2)ワクチンなしは「無防備」?

2回目までの接種でできた中和抗体は薄れても、ウイルスを退治する免疫細胞などの働きは残っており、全くの無防備にはなりません」と書いてあると、未接種者は「全くの無防備」だと理解したくなる。しかし、未接種者も自然免疫や獲得免疫で「ウイルスを退治する」仕組みを体内に持っている可能性が高い。「ワクチンを接種する」方向に誘導したい気持ちがあるのだろうが、感心しない書き方だ。


(3)だったら「必要」ないのでは?

2回目までの接種」の後に「抗体が減っても、入院や重症化を防ぐ効果は持続するという報告もあります」と滝編集委員は言う。その「報告」が正しいとの前提で言えば、「2回目までの接種」で十分ではないのか。

入院や重症化を防ぐ効果」を上乗せできないとすると、何のために「3回目の接種」をするのか。無症状や軽症で済む感染を防ぐためなのか。であればメリットが小さすぎる。


(4)若くて基礎疾患もない場合は?

高齢者や、基礎疾患があってリスクの高い人などは3回目の接種が望ましい」とも滝編集委員は書いている。裏返せば「高齢者や、基礎疾患があってリスクの高い人など」を除くと「3回目の接種」は必要ないとも取れる。そこもしっかり説明してほしい。

次に「海外の状況」を説明した部分にもツッコミを入れておこう。


【日経の記事】

ワクチン接種が早く進んだイスラエルは8月から3回目接種を開始しました。米国やドイツ、フランス、英国も9月から年齢の高い人や基礎疾患などリスクのある市民に3回目接種を始めました。

これらの国は経済活動の再開に伴い、一度は減少していた感染者が再び増加する傾向にあります。ワクチンの接種率が6~7割と日本(約76%)に比べて低いことも感染者増加の一因と考えられます


◎ワクチン効果と言える?

日本は「ワクチンの接種率」が高いから「感染者」を抑えられているが、「イスラエル」「米国やドイツ、フランス、英国」では「接種率」が日本より低いから「感染者増加」を招いていると滝編集委員は見ているのだろう。

これは無理がある。まず「約76%」と「6~7割」であれば「接種率」に大きな違いはない。さらに韓国の問題がある。

日経の記事によると「韓国のワクチン接種率は日本とほぼ同じ78%」だが、11月18日には「新型コロナウイルスの新規感染者数が3292人と1カ月半ぶりに過去最多を更新した」らしい。韓国も含めて考えれば「ワクチンの接種率」の差で感染動向を説明するのは困難だ。

滝編集委員には一種のワクチン信仰があるのだろう。科学技術担当の編集委員ならば、そうした信仰の類を排して物事を分析してほしい。


※今回取り上げた記事「ニッキィの大疑問~ワクチン3回目なぜ必要? コロナ第6波に備え 抗体活性化

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211122&ng=DGKKZO77776020S1A121C2EAC000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。滝順一編集委員への評価は暫定でEとする。

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