日本経済新聞の藤井彰夫論説委員長は18日の党首討論会の中身をチェックせずに20日朝刊1面の記事を書いたのだろうか。各党の「分配政策」について「そのお金をどう賄うかという議論がほとんどされていない」「財源はあいまいな政党ばかり」と解説しているが、実態と乖離している。日経には以下の内容で問い合わせを送った。
夕暮れ時の筑後川河川敷 |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 論説委員長 藤井彰夫様
20日の朝刊1面に載った「責任ある分配議論を」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「各党の選挙公約には現金を国民に配る給付金など『分配政策』が並ぶ。コロナ禍で困窮する個人や企業への安全網を整える支出は必要だが、問題はそのお金をどう賄うかという議論がほとんどされていないことだ。かつては与野党が政策の数値目標や財源を明示した政権公約(マニフェスト)を競った時期があったが、今は給付金や減税は掲げても財源はあいまいな政党ばかりだ」
本当に「そのお金をどう賄うかという議論がほとんどされていない」「財源はあいまいな政党ばかり」と言えるでしょうか。産経新聞によると18日の党首討論会では以下のようなやり取りがあったようです。
山本氏「国難を救うために年間最大いくらの国債(発行)が必要か」
岸田氏「非常時において人の命や暮らしがかかっている政策の財源は国債を思い切って使うべきだ」
(中略)
--公約は給付と減税のオンパレード。バラマキ合戦という批判もある
志位氏「富裕層に対する優遇税制を改める。所得税、住民税を65%まで上げる。法人税は28%に戻す」
玉木氏「正常の軌道に戻すための50兆円は全額国債でやったらいい」
山口氏「スピード感という点で現金給付は優れている」
枝野氏「財政規律は重要だが、百年に一度の危機から乗り切るための臨時措置は国債でやるしかない」
引用は以上です。
党首討論会でこれだけ「財源」に関する「議論」があったのに「そのお金をどう賄うかという議論がほとんどされていない」と言えますか。
「財源はあいまいな政党ばかり」とも感じられません。共産党は「所得税、住民税を65%まで上げる。法人税は28%に戻す」と明言しており「あいまい」ではありません。「正常の軌道に戻すための50兆円は全額国債でやったらいい」という国民民主党も歯切れの悪さはありません。自民党や立憲民主党も「国債」に頼る方針を明らかにしています。
「そのお金をどう賄うかという議論がほとんどされていない」「財源はあいまいな政党ばかり」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
せっかくの機会なので、今回の記事に関する感想も加えておきます。
記事の最後で「各党は、初めて投票する若者たちや、まだ投票権を持たない将来世代にも恥ずかしくない責任のある議論を深めてほしい」と藤井様は訴えています。しかし日経の論説委員長として「議論」を引っ張る気概は見えません。
「コロナ禍で困窮する個人や企業への安全網を整える支出は必要だが、問題はそのお金をどう賄うかという議論がほとんどされていない」と嘆くならば、藤井様が率先して案を出してはどうでしょう。「安全網を整える支出」をした上で「そのお金をどう賄う」べきか提案すればよいのではありませんか。
「議論を深めてほしい」と訴えた今回の記事もそうですが、日経は社説でもやたらと「議論」を求めるものの、具体策を出すのは苦手です。「責任ある分配議論を」と訴えるのならば、まずは自分たちの主張を明確にしてはどうでしょうか。
そこから逃げるのならば、何のための「論説委員長」なのでしょうか。
問い合わせは以上です。回答をお願いします。日経では読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアの一員として責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった
※今回取り上げた記事「責任ある分配議論を」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211020&ng=DGKKZO76798210Q1A021C2MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。藤井彰夫論説委員長への評価はDを据え置く。藤井論説委員長に関しては以下の投稿も参照してほしい。
現状は「自由貿易体制」? 日経 藤井彰夫編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/07/blog-post_9.html
北欧訪問の意味がない日経 藤井彰夫論説委員「中外時評」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_12.html
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