2021年9月26日日曜日

日刊ゲンダイDigitalで財政破綻の危険性を論じた松島修氏の誤解

投資助言会社社長の松島修氏がどんな人物なのか分からないが、財政問題に関して誤った認識を持っているのは確実だ。25日付の日刊ゲンダイDigitalに載った「富を拡大するインテリジェンス2.0~日本の国債は国民の貸し付けだから安心なのか 麻生大臣かつて『ギリシャとは違う』と発言」という記事を見ながら問題点を指摘したい。

夕暮れ時の筑後川

【日刊ゲンダイDigitalの記事】

興味深いことに、世の中で大事なところに混乱があります。

財政問題も何が正しく、何が間違っているのか分からない状態が長年続いています。

2014年に麻生太郎氏(当時、副総理兼財務大臣・金融担当大臣)が、日本の国債が1000兆円の大台が近づいてきたことから「日本が破綻する」という報道に反対し、「日本国債のほとんどは日本人が買っており、国債は国民の借金ではなく国民の貸し付け。ギリシャとは違う。などから、破綻の心配はない」と発言しました。

多くの人がそれを信じ、今でも信じている人は多いですが、この発言には正しい部分と間違った部分があります

正しい部分は「日本はギリシャと違い、ギリシャ国債を買っている多くはギリシャ国民以外の外国人、日本国債を買っているのはほとんど日本人」だということです。

従って国が破綻すると、ギリシャは外国人への返済ができず、日本は国民への返済ができなくなります。

国をひとつの家族として考えると分かりやすいです。

家族の中で父親が放蕩し、銀行負債を1億円抱え、破産したとします。

父親が破産しても家族が連帯保証していなければ家族全体の資産は減りません。

しかし、父親の借金が銀行からではなく母親からだった場合、父親が破産すると母親の1億円の貸付金はなくなり、家族全体の資産は1億円減ります

困るのは家族です

前者がギリシャで、後者が日本です。

国債は国民の貸し付けなので、破綻したら一番困るのは貸付者である国民です。


◎「家族として考えると分かりやすい」?

この発言(麻生氏の発言)には正しい部分と間違った部分があります」と言いながら「間違った部分」には言及していない。「正しい部分」以外が「間違った部分」だとすると「破綻の心配はない」という発言を「間違った部分」と捉えているのだろう。しかし、間違いと言える根拠は示さずに「破綻の心配」がある前提で話が進んでいく。

政府は「破綻」を望まないとの前提で言えば、「破綻の心配」は要らない。「日本国債を買っているのはほとんど日本人」だからではない。政府・日銀は日本円を無限に創出できるからだ。松島氏はこの点を理解していないのか。あるいは、あえて無視しているのか。いずれにしても問題がある。

国をひとつの家族として考える」のも好ましくない。「父親の借金が銀行からではなく母親からだった場合、父親が破産すると母親の1億円の貸付金はなくなり、家族全体の資産は1億円減ります」と松島氏は例を挙げている。

この場合「父親」が政府で「母親」が国民なのだろう。しかし「父親」は日本円を創出する力を持っていない。この点で政府とは決定的に異なる。仮に「父親」が無限の通貨発行権を持っていたとしよう。「放蕩」が「破産」に結び付くだろうか。「父親」は簡単に「1億円」を生み出して「母親」に返済できるはずだ。

ちなみに、普通の「家族として考え」た場合も松島氏の解説には「間違った部分」がある。

困るのは家族です」という結論だ。「家族」の財政状況で負債を無視して資産だけで「考え」たために誤った説明になっている。

父親の借金が銀行からではなく母親からだった場合、父親が破産すると母親の1億円の貸付金はなくなり、家族全体の資産は1億円減ります」という説明に問題はない。ただ、「父親」の負債も「1億円」減る。純資産ベースで変化はない。

他に資産・負債がないと仮定すると、この「家族」の純資産は最初からゼロだ。「家族」の中で考えると「母親」は「困る」かもしれないが、「父親」は借金から解放される。全体として見て「困るのは家族」という認識は明らかに間違っている。

松島氏の言うことは信じるな。とりあえず、この結論でいいだろう。


※今回取り上げた記事「富を拡大するインテリジェンス2.0~日本の国債は国民の貸し付けだから安心なのか 麻生大臣かつて『ギリシャとは違う』と発言

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/295142


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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