2021年9月8日水曜日

「米『お節介外交』は終わるのか」に答えを出さない日経 大石格上級論説委員

日本経済新聞の大石格上級論説委員が書く記事はやはり出来が良くない。今回は、8日の朝刊オピニオン面に載った「中外時評~米『お節介外交』は終わるのか」という記事を材料に問題点を見ていこう。

夕暮れ時の筑後川

【日経の記事】  

かつては孤立外交を標榜していた米国だが、20世紀に入ると2回の世界大戦やベトナム戦争などの局面で、常に介入を選択してきた。よくいえば世界の警察官であり、悪くいえばお節介外交である。


◎20世紀は「常に介入」?

これを読むと「20世紀」の米国は「常に(軍事)介入を選択してきた」と理解したくなる。例えば中越戦争(1979年)やチェチェン紛争(1994年~)に米国は「介入」したのか。

見出しにもなっている「お節介外交」の定義は明らかにはなっていないが、文脈から判断して「軍事介入」を指すとの前提で話を進めていきたい。

さらに記事を見ていこう。

【日経の記事】

アフガンとイラクで手いっぱいになった米国は以降、国際紛争への介入に消極的になった。新たな戦争を起こさないと公約して当選したオバマ大統領は、14年にロシアがクリミアを併合したときでも言葉で非難しただけだった。


◎「国際紛争への介入に消極的」?

米国が「国際紛争への介入に消極的になった」時期についても書き方が微妙だが、イラク戦争が始まった2003年以降と解釈しよう。大石上級論説委員の説明だと「オバマ大統領」の時代には「国際紛争への介入」をしていないような印象を受ける。実際には2011年以降のリビア内戦やシリア内戦に「介入」しているはずだ。なのに「国際紛争への介入に消極的」なのか。

大石上級論説委員が「自分には消極的に見える」というなら、それはそれでいい。だが見出しにもある「米『お節介外交』は終わるのか」との問いにはきちんと答えを出してほしかった。それができているのか。記事の終盤を見ていこう。


【日経の記事】

お節介外交はこのまま終わるのか。マッカーサー氏と同時代に活躍した米陸軍のジョージ・パットン氏が「闘争を愛し、痛みやぶつかり合いを愛し、勝者を愛し、敗者を認めない」と評した米国人気質まで変わるのだろうか。

答えの代わりに、もうひとつ映画を紹介したい。ベトナム戦争のさなかにつくられた歴史劇「ローマ帝国の滅亡」である。超大国になったローマだが、徐々に周辺国との戦いに疲れ始める。主人公のひとりがこう演説する。「蛮族の族長を処刑すれば、彼らの憎しみは永遠に消えない。憎しみは戦いを生む。戦いをやめよ」と。

脚本の背後にあるのは、1962年のキューバ危機後にケネディ大統領が提唱した米ソの共存共栄である。当時の演説でケネディ氏はこう訴えている。「私たちの求める平和はどんなものか。軍事力によって世界に強制的にもたらされるパクス・アメリカーナではない」

米中の対立が深まる現在、話し合い外交は弱腰と批判されがちだ。相手に侮られることなく、過剰な介入にもならない。ケネディ氏の言う平和を見いだすことができるだろうか


◎結局、答えは出したくない?

お節介外交はこのまま終わるのか」との問いに答えは出さず「答えの代わりに、もうひとつ映画を紹介したい」で逃げている。「お節介外交」が終わるかどうか大石上級論説委員の見方をなぜ明確に打ち出せないのか。後で「予想が外れた」と言われるのを恐れているのか。だとしたら「お節介外交はこのまま終わるのか」と問わないでほしい。

最後には「ケネディ氏の言う平和を見いだすことができるだろうか」と、さらに問いを発する形で終わっている。成り行き注目型の締めとも言える。

今回の記事を読む限り、大石格上級論説委員が新たに取材した形跡は窺えない。事実認識も怪しい。そして、自ら持ち出した問いに答えを出すことからも逃げている。

そろそろ後進に道を譲る時期が来ているのではないか。


※今回取り上げた記事「中外時評~米『お節介外交』は終わるのか」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210908&ng=DGKKZO75532380X00C21A9TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。大石格上級論説委員への評価もDを維持する。大石上級論説委員については以下の投稿も参照してほしい。


日経 大石格編集委員は東アジア情勢が分かってる?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_12.html

ミサイル数発で「おしまい」と日経 大石格編集委員は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/12/blog-post_86.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_15.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_16.html

日経 大石格編集委員は「パンドラの箱」を誤解?(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_89.html

どこに「オバマの中国観」?日経 大石格編集委員「風見鶏」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_22.html

「日米同盟が大事」の根拠を示せず 日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_41.html

大石格編集委員の限界感じる日経「対決型政治に限界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_70.html

「リベラルとは何か」をまともに論じない日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_30.html

具体策なしに「現実主義」を求める日経 大石格編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_4.html

自慢話の前に日経 大石格編集委員が「風見鶏」で書くべきこと
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_40.html

米国出張はほぼ物見遊山? 日経 大石格編集委員「検証・中間選挙」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post_18.html

自衛隊の人手不足に関する分析が雑な日経 大石格編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html

「給付金申請しない」宣言の底意が透ける日経 大石格編集委員「風見鶏」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_74.html

「イタリア改憲の真の狙い」が結局は謎な日経 大石格上級論説委員の「中外時評」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_7.html

菅政権との対比が苦しい日経 大石格編集委員「風見鶏~中曽根戦略ふたたび?」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_18.html

「別人格」を疑う余地ある? 日経 大石格上級論説委員「中外時評~政治家は身内にこそ厳しく」

https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_17.html

日経「風見鶏~基本法花盛りの功罪」に感じる大石格編集委員の罪https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/07/blog-post_11.html

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