2021年8月20日金曜日

何があってもやっぱり「日米同盟強化」? 日経 甲原潤之介記者「アフガンの蹉跌(下)」

20日の日本経済新聞朝刊1面に安全保障エディターの甲原潤之介記者が書いた「アフガンの蹉跌 試練の世界秩序(下)米国頼みに綻び~『自力対応』迫られる日本」という記事は期待外れの内容だった。「『自力対応』迫られる日本」という見出しを見た時は米国依存の脱却を訴えるのかと感じたが、相変わらず念仏のように日米同盟強化を訴えている。記事の終盤を見ていこう。

夕暮れ時の耳納連山

【日経の記事】

「アフガンは明日の台湾だ!」。一部の中国メディアは撤退する米国の姿勢をやゆし、中国が武力統一へ動けば台湾は自力に頼るしかないと書き立てた。

米軍のアフガン撤退は対中シフトの一環で、北東アジアから退くわけではない。それでも中国の軍備増強が進めば米国の影響力は相対的に低下していく。

バイデン米大統領は14日の声明で「アフガン軍が自国を守れない、もしくは守る意思がなければ米軍が駐留しても意味がない」と述べた。自民党内には「米軍任せだったアフガンを日本に置き換えたらどうなるか」との問題提起がある。

日本の安保政策は引き続き米国との同盟強化が機軸となる。そのうえで憲法が掲げる平和主義を守りつつ、邦人保護や領土防衛へ米国に頼らず自力でできることはなにか。米国の蹉跌(さてつ)は日本にも必要な備えを迫る。


◎思考停止に陥っていないか?

自民党内には『米軍任せだったアフガンを日本に置き換えたらどうなるか』との問題提起がある」と甲原記者自身が書いている。誰でも思うことだ。なのに「日本に置き換えたらどうなるか」をまともに論じていない。

今回の「アフガン」の件は、本当に「米国との同盟強化」を唱えていればいいのかを日経に問うている。それに対する答えが「日本の安保政策は引き続き米国との同盟強化が機軸となる」でもいい。ただ、なぜそうなるのかの根拠は欲しい。

日本は米国の存在を前提に安全保障政策を組み立ててきた」と甲原記者も書いている。その「前提」が揺らぐ事態が起きているのに、理由も示さず「引き続き米国との同盟強化が機軸となる」と言われても説得力は感じない。

そして「憲法が掲げる平和主義を守りつつ、邦人保護や領土防衛へ米国に頼らず自力でできることはなにか。米国の蹉跌は日本にも必要な備えを迫る」と記事を締めている。結局、具体論には入っていない。

「大変なことになった。日本も色々考えなきゃ」程度のことなら誰でも言える。「安全保障エディター」というそれらしい肩書を付けているならば、もう少し具体的な提言ができないものか。

個人的には「米軍基地の撤退→自主防衛」へと進むべきだと思う。日米同盟は在日米軍基地がない状態で存続させる。米国が「基地撤退なら日米安保破棄」と脅してくるなら、その時は同盟解消でいい。アフガニスタンでの米国の敗北を見て「でも日本のことは責任を持って守ってくれるだろう」と信じる方がおかしい。

「自主防衛など無理」と思い込んでいる人には問いたい。ベトナムはなぜ独立を保てているのか。中国とは地続きで国力も日本より劣る。米国の同盟国でもない。中国の属国になっている訳でもない。

日本はベトナムより人口も経済規模も大きいし何より島国だ。自主防衛が不可能と考える方がどうかしている。

甲原記者は「安全保障エディター」としてこうした主張にどう反論するだろうか。そこをまずは考えてほしい。


※今回取り上げた記事「アフガンの蹉跌 試練の世界秩序(下)米国頼みに綻び~『自力対応』迫られる日本

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210820&ng=DGKKZO74951000Q1A820C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。甲原潤之介記者への評価はDを据え置く。甲原記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 甲原潤之介記者は「非核化の歴史3勝3敗」と言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/33.html

どうなったら「世界分裂」? 日経 甲原潤之介記者に問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_25.html

日経 甲原潤之介記者の見立て通りなら在日米軍は要らないような…https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_20.html

0 件のコメント:

コメントを投稿