12日の日本経済新聞朝刊1面に載った「がん治療中でも保険~マイシン、乳がんなど再発備え」という記事は1面に持ってくるべきネタなのか疑問だ。全文を見た上で、その理由を述べたい。
熊本市内の鉄塔と夕陽 |
【日経の記事】
富国生命保険や三菱商事が出資するMICIN(マイシン、東京・千代田)は、がんの治療中でも再発に備えて加入できる新たな保険を発売する。最新の臨床データをもとに発病の可能性を分析。乳がんなどの再発に保障を提供する。画一的なリスク分析に頼る保険業界の事業モデルに変革を促す可能性がある。
乳がんと子宮頸(けい)がん、子宮体がんの再発を対象にした保険を8月下旬に発売する。一般的な保険商品の開発に使われる標準生命表や患者調査ではなく、連携する医療機関から入手したデータを活用する。
医療技術の進歩でがん患者の生存率は年々上昇している。治療中から加入でき、再発時の経済的な負担と死亡の両方に備えられる保険は初めてという。マイシンはリスクの精密な把握と、病状に応じた保険料の細かな設定により、安定的に運営できる仕組みを整えた。
◎値段が分からないと…
「治療中から加入でき、再発時の経済的な負担と死亡の両方に備えられる保険は初めて」というのが、このニュースの肝だろう。「再発時の経済的な負担と死亡の両方に備えられる保険」はあったが「治療中から加入でき」るタイプは「初めて」との趣旨だと思える。この前提でみれば、それほど画期的な話ではない。がんの「再発時」に「備えられる保険」を初めて開発したのならば、まだ分かるが…。
個人的には、高額療養費制度がある日本で民間の医療保険に加入する必要はないと見ている。がん保険に関しても同じだ。保険適用外の治療を想定すれば話は少し変わるが、これを保険でカバーすべきとは感じない。しかし、ここを掘り下げるつもりはない。がん保険にも意味があると仮定して話を進めていこう。
意味があるとしても、保険料と補償内容の関係が分からないのでは話にならない。しかし記事には、それがない。詳細な説明は無理だとしても、モデルケースぐらいは示してほしい。推測だが、保険料が高い割に補償内容は大したことがないのではないか。
「再発時の経済的な負担と死亡の両方に備えられる保険」を「治療中から加入でき」るようにすれば、保険料は高くなりやすいだろう。それでも「マイシン」の保険が画期的だと判断したのならば、いくら払えばどの程度の補償が得られるのかを説明した上で1面の記事にすればいい。
そこから逃げているのが残念だ。筆者は保険料のことなど全く考えていないのかもしれないが、だとしたら保険の記事を書く資格がそもそもない。
※今回取り上げた記事「がん治療中でも保険~マイシン、乳がんなど再発備え」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210812&ng=DGKKZO74703300S1A810C2MM8000
※記事の評価はD(問題あり)
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