日本経済新聞の岸本まりみ記者は記事を書く上での基礎ができていないと思える。社内できちんとした指導を受ける機会もなかったのだろう。3日の朝刊国際・アジアBiz面に載った「ツナ缶最大手タイ・ユニオン、日本でペットフード参入」という記事を材料に岸本記者へ助言をしてみたい。
夕暮れ時の筑後川 |
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
ツナ缶世界最大手のタイ・ユニオン・グループは日本のペットフード市場に参入する。このほど東京都内に販売会社を設立し、自社で生産する高品質の製品を輸出する。外出自粛が続くなか、日本でペット関連商品への支出が伸びていることに対応する。
社名は「ジャパンペットニュートリション」(東京・中央)。資本金は500万円。タイ・ユニオンの子会社であるソンクラー・キャニングが90%を出資する。
タイ・ユニオンはツナ缶や冷凍シーフードを手掛ける水産加工大手。魚肉などを使ったペットフードも生産し、2020年12月期は「ペットフード・高付加価値品」部門が売上高の15%を占めた。この部門の売上高は約200億バーツ(約700億円)と前の期比8%増加した。タイ・ユニオンは「人々はよりペットにお金を使うようになった」と説明している。
矢野経済研究所(東京・中野)によると、21年度の日本のペット関連市場規模は前年度比1.9%増の1兆6543億円になる見通しだ。22年度は前の年度比2%増の1兆6873億円になると予測。より良質なペットフードを与えたい飼い主の需要が高まっている。
◇ ◇ ◇
(1)whenを入れよう
ニュース記事に「when」が抜けやすいのは日経の悪しき伝統だ。岸本記者もそれを受け継いだのだろう。「タイ・ユニオン・グループは日本のペットフード市場に参入する」と書いているものの「参入」時期に触れていない。
「このほど東京都内に販売会社を設立」との記述からは「既に参入しているのに、ニュースらしくするため、あえて時期に触れなかったのでは?」との疑問も浮かんでくる。だとしたら明らかな騙しだ。絶対にやめてほしい。
(2)ニュースの意義を考えよう
ニュース記事を書く時には「このニュースにはどんな意義があるのか」を考えてほしい。今回の場合、それは何なのか。記事を最後まで読んでも、よく分からない。
例えば、今の日本にはない「高品質」の「ペットフード」が入ってくることがポイントだとしよう。その場合、どういう意味で「高品質」なのかといった情報をしっかり書き込む必要がある。
今回の記事は新聞紙面で45行とそれほど長くない。しっかりニュースの意義を意識できればポイントを絞った記事になりやすい。しかし「とりあえず知ってる情報を並べてみました」的な作りになってしまっている。
(3)まず本筋の情報を詳しく伝えよう
ニュース記事では、まず本筋の話をしっかり書き込んでほしい。背景説明は「余裕があれば入れる」という認識でいい。今回の記事では4段落のうち後半の2段落を背景説明に費やしている。「参入」がニュースならば、まずはそこの情報を詳しく伝えたい。
いつ「参入」するのかはもちろん要る。「輸出する」数量・金額の目標もあった方がいい。「タイ・ユニオン・グループ」が「ペットフード」でどの程度の世界展開をしているのかも欲しい。例えば「外国での販売は日本が初めて」といった話ならばニュースの重要性も高まる。
「タイ・ユニオン・グループ」は「ペットフード」では世界で何番手なのか。「高品質」とは具体的にどういうことなのか。その辺りの情報があれば、さらに好ましい。そこまで盛り込んでも45行に達しない時に「21年度の日本のペット関連市場規模は~」といった話を足せばいい。
とりあえず岸本記者には「自分は記事を書く上での基礎的な力がないのでは?」と疑ってみてほしい。そうすれば足りないものが少しずつ見えてくるはずだ。
※今回取り上げた記事「ツナ缶最大手タイ・ユニオン、日本でペットフード参入」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210603&ng=DGKKZO72529400S1A600C2FFJ000
※記事の評価はD(問題あり)。岸本まりみ記者への評価はDで確定とする。岸本記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
業界紙なら分かるが…日経「プリンスホテル、タイで訪日客誘致」https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/11/blog-post_0.html
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