2021年6月10日木曜日

東洋経済「会社とジェンダー」で事実誤認発言を連発した上野千鶴子氏

社会学者の上野千鶴子氏は事実を重視しない学者のようだ。週刊東洋経済のインタビュー記事に出てくる上野氏の発言からは、そう判断せざるを得ない。あえて事実を曲げて伝えているのか、事実を認識する能力が低いのかは分からない。前者ならばモラルに欠けるし、後者ならば社会学者としては能力不足だ。

夕暮れ時の筑後川

今回の記事では3件の問い合わせを週刊東洋経済の編集部に送った。順に紹介したい。


【東洋経済への問い合わせ~その1】

上野千鶴子様 週刊東洋経済 編集長 西村豪太様  印南志帆様

6月12日号の特集「会社とジェンダー」の中の「INTERVIEW 社会学者 上野千鶴子 『女性を無駄遣いする国は、ゆっくり二流に墜ちていく』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは上野氏の以下の発言です。

問題は、現状維持のままだと日本全体がジリ貧になっていく、ということ。変わらなくては現状維持さえ難しいのに、それを当事者たちがわかっていない。すでに海外企業と日本企業とで利益率は1桁違う。労働者の生産性はあれよあれよという間に下がって、OECD(経済協力開発機構)諸国の中でほぼ最下位だ

日本生産性本部の資料によると「OECDデータに基づく2019年の日本の時間当たり労働生産性」は「OECD加盟37カ国中21位」です。「1人当たり労働生産性」で見ても「37カ国中26位」です。「ほぼ最下位」ではありません。何位までなら「ほぼ最下位」と言えるかは微妙ですが「37カ国中21位」や「26位」を「ほぼ最下位」と見なすのは無理があります。

付け加えると「労働者の生産性はあれよあれよという間に下がって」という説明にも問題があります。どの期間を見るかにもよりますが、日本の「労働者の生産性」は概ね横ばい傾向です。

労働者の生産性」が「OECD諸国の中でほぼ最下位」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

週刊東洋経済では、読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。西村様にはジャーナリストとしての良心に基づく適切な対応を改めて求めます。


【東洋経済への問い合わせ~その2】

上野千鶴子様 週刊東洋経済 編集長 西村豪太様  印南志帆様

6月12日号の特集「会社とジェンダー」の中の「INTERVIEW 社会学者 上野千鶴子 『女性を無駄遣いする国は、ゆっくり二流に墜ちていく』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは上野氏の以下の発言です。

均等法の施行後、企業は雇用における女性差別を、総合職と一般職という、コース別人事管理制度を導入する“雇用区分差別”に置き換えることで切り抜けた。つまり、前者は100%近く男性プラスわずかな数の女性、後者は100%女性が就職するように仕向け、実態をほとんど変えることなく『機会均等』を実現した

この説明が正しければ「総合職」は「100%近く男性」で「一般職」は「100%女性」となっているはずです。ところが、2014年の厚生労働省の調査で「採用者の男女比率」を見ると「総合職」で女性が22.2%を占めています。「一般職」でも男性比率が17.9%に達しています。上野氏の発言とは大きく食い違います。

前者は100%近く男性プラスわずかな数の女性、後者は100%女性が就職するように仕向け、実態をほとんど変えることなく『機会均等』を実現した」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

週刊東洋経済では、読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。西村様にはジャーナリストとしての良心に基づく適切な対応を改めて求めます。


【東洋経済への問い合わせ~その3】

上野千鶴子様 週刊東洋経済 編集長 西村豪太様  印南志帆様

6月12日号の特集「会社とジェンダー」の中の「INTERVIEW 社会学者 上野千鶴子 『女性を無駄遣いする国は、ゆっくり二流に墜ちていく』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは上野氏の以下の発言です。

ネオリベラリズム政策を掲げる安倍晋三政権の下で、労働力減少対策として女性の雇用がぐんと拡大し、生産年齢人口の女性の就労率はEUや米国を抜き7割まで高まった。しかし内訳を見てみると、働く女性の約6割は非正規。均等法はできたけれど、増えたのはその対象にならない女性ばかりだった、というわけだ

これを信じれば「安倍晋三政権の下で」女性の正規雇用は増えていないはずです(第2次安倍政権との前提で話を進めます)。総務省の労働力調査で、女性に関して「正規の職員・従業員」の推移を見ると、2020年は1193万人と12年に比べて51万人も増えています。「増えたのはその対象にならない(非正規の)女性ばかりだった」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

週刊東洋経済では、読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。西村様にはジャーナリストとしての良心に基づく適切な対応を改めて求めます。

 

◇   ◇   ◇


結局、回答はなかった。インタビュー記事の内容が上野氏の発言をほぼ忠実に再現しているとの前提で言えば、上野氏を学者失格と見なして良いだろう。そうした人物をインタビュー記事に登場させた上に、上野氏の発言に出てくるデータが正しいかどうかの確認を怠ったと見られる印南志帆記者の責任も重い。


※今回取り上げた記事「INTERVIEW 社会学者 上野千鶴子 『女性を無駄遣いする国は、ゆっくり二流に墜ちていく』

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27153


※記事の評価はD(問題あり)。印南志帆記者への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。


※今回の記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「女性にすべてのシワ寄せが来る」と東洋経済で訴えた上野千鶴子氏の誤解https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/blog-post_11.html

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