日本経済新聞朝刊1面の連載「分岐点の中国 共産党100年」はツッコミどころが多い。28日の「(上)『開放』から再び統制へ~一党支配、揺らぎ警戒 次の成長軸みえず」という記事をまずは見ていこう。
両筑橋に沈む夕陽 |
【日経の記事】
だが過去の高成長を支えた柱は外資による技術導入と安価な労働力だった。05年ごろには新興国で農村部での労働力の余剰がなくなって都市部への人口流入が減り、賃金上昇が始まる「ルイスの転換点」を超えたとされ、沿海部を中心に労働コストは急上昇した。15~64歳の生産年齢人口も13年をピークに減少に転じ、かつての2ケタ成長は見込めなくなった。
中略)習指導部は自由こそがイノベーションの源泉と位置付ける米国に対し、国家主導の体制で挑もうとしている。だが中国を世界第二の経済大国に押し上げたのは、アリババなど米国の模倣もいとわずに激しい競争を繰り広げてきた民間のハイテク企業群でもあった。国家の管理を強めれば、潜在力を封じかねない。
◎矛盾とは言わないが…
「過去の高成長を支えた柱は外資による技術導入と安価な労働力だった」「2ケタ成長は見込めなくなった」と言い切った後に「中国を世界第二の経済大国に押し上げたのは、アリババなど米国の模倣もいとわずに激しい競争を繰り広げてきた民間のハイテク企業群でもあった」とも述べている。
矛盾しているとは言わないが、しっくりは来ない。「世界第二の経済大国に押し上げた」のが「民間のハイテク企業群でもあった」のならば、「安価な労働力」に頼らなくても「民間のハイテク企業群」を柱に再び「2ケタ成長」を実現できる可能性があるのではないか。
さらに引っかかったのが最後の段落だ。
【日経の記事】
国民の不満を経済で解消できなくなれば、香港や台湾への高圧姿勢のような対外強硬路線に人心掌握を頼らざるを得なくなる。100歳を迎える共産党の統治の行方は、世界も左右する大きな分岐点となる。
◎香港は国外?
「香港や台湾への高圧姿勢のような対外強硬路線に人心掌握を頼らざるを得なくなる」という説明が引っかかる。「香港や台湾」が中国外だとも読み取れる。しかし少なくとも「香港」は中国に属している。
「香港や台湾」を中国外と断定してはいないとの弁明は成り立つが、だったら「香港や台湾への高圧姿勢を中華圏の外へも広げる対外強硬路線」などと書いた方がいい。
さらに言えば「香港」への「強硬路線」が「人心掌握」につながるのかとの疑問が残る。国内で民主化を求める人々を弾圧すると「人心掌握」の上で有効なのか。絶対違うとは言わないが、普通は逆効果だろう。
※今回取り上げた記事「分岐点の中国 共産党100年(上)『開放』から再び統制へ~一党支配、揺らぎ警戒 次の成長軸みえず」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210628&ng=DGKKZO73321720Y1A620C2MM8000
※記事の評価はD(問題あり)
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