2021年5月6日木曜日

インタビュー記事に粗さ目立つ日経ビジネスの磯貝高行編集長

前任の東昌樹氏に代わり日経ビジネスの編集長となった磯貝高行氏。東氏が優れた編集長だっただけにプレッシャーは大きいだろうが、負けずに頑張ってほしい。今回は5月3日号に載った「編集長インタビュー~アサヒGHD勝木社長、もう国内シェアは追わない」という記事に注文を付けてみたい。東氏も完璧だった訳ではなく当時の編集長インタビューにも問題があった。磯貝氏も読者の声に真摯に耳を傾けて優れた編集長となってほしい。

大阪ビジネスパーク
今回の記事で気になったくだりを見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

ーー小路明善前社長の5年間、総額2兆円を超えるM&Aで勝木さんは中心的な役割を果たしました。今後のグローバル展開をどう描いていますか。

最優先課題としては財務健全化があります。24年に純有利子負債をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の3倍をめどに減らしたい。

ーー有利子負債は2兆円近い

1兆8236億円です。前期末で。大型M&Aはなかなか難しい。

そういう状況なので腰を落ち着けてオーガニック中心の成長に取り組める。昨年11月に2つのユニットに分かれていた欧州事業をまとめ、買収した豪ビール最大手も10月に統合作業を終えました。いよいよ日本と欧州、オセアニアの3極のベストプラクティスでやっていきたい。人材交流を進め、原材料の共同調達も広げたい。グローバル・プレミアム・ブランドにも期待しています。スーパードライを筆頭に5つを世界の大都市を中心に流通させます。

ーースーパードライを世界トップ10のブランドに育てると公表されていますが、グローバルで数量を追うのですか。

ボリュームだけではなく、価値で世界トップ10に入りたい。ビールは1日の労働の疲れを癒やすためにがぶ飲みする飲料から、コミュニケーションのツールになってきました。クールでハイエンドで、スタイリッシュなものがいいと。豪州ではスーパードライがびしっとはまり、5年半いた間に販売数量が5倍になりました。


◎なぜ現状を見せない?

勝木さん」は「24年に純有利子負債をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の3倍をめどに減らしたい」と語っているが、直近の数字が見当たらない。そこは磯貝氏が見せてあげるべきだ。

どうやって「3倍」に持っていくのかも、もう少し語らせたい気もする。「EBITDA」を増やすのか「純有利子負債」を減らすのか、あるいは両方を追うのか。「腰を落ち着けてオーガニック中心の成長に取り組める」と述べているので「EBITDA」を増やす考えなのかと思うが材料が足りない。

さらに言えば「オーガニック中心の成長」という表現は馴染みがない読者も多いと思える。説明があった方が親切だ。

さらに付け加えると「3倍」が「純有利子負債」ベースの話ならば「有利子負債は2兆円近い」という質問のところに「純有利子負債」の数字も補足で入れた方がいいだろう。

スーパードライを世界トップ10のブランドに育てる」という話にも似たような問題がある。まず現状で何位なのか触れていない。また「価値で世界トップ10」という発言があるが、何で「価値」を測るのか不明だ。

インタビューでは、あれもこれもと話題を広げずに焦点を絞った方がいい。そして絞ったところは重点的に根掘り葉掘り聞いていく。その方が迫力も出るし、説明不足も起きにくい。

今回のインタビューでは、あれこれ話題を広げて深掘りしないままインタビューを終えたという印象を受けた。

総花的に話を聞いて予定調和的に記事を仕上げればいいのならば、わざわざ編集長が出向く意味はない。取材経験が豊富な編集長だからこその緊張感あるインタビュー記事を読者に提供する。そういう気概を持ってインタビューに臨んでほしい。

編集長としての時間はある。今後に期待したい。


※今回取り上げた記事「編集長インタビュー~アサヒGHD勝木社長、もう国内シェアは追わない

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00119/00116/


※記事の評価はD(問題あり)。磯貝高行編集長への評価も暫定でDとする。

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