日本経済新聞の桃井裕理記者には書き手としての引退を勧告している。21日の朝刊1面に載った「新時代の日米(下)政府と企業に問う覚悟~中国、制裁カードで威嚇」という記事を見ると「中国総局長」という肩書が付いている。立派な役職に就いているのだから管理職業務に専念してほしい。今回の記事もやはり問題ありだ。一部を見ていこう。
日田市の三隈川 |
【日経の記事】
たとえば、米インド太平洋軍が推進する「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」構想がある。インド太平洋地域では中国が米国の軍事力を物量的に圧倒し、米軍を寄せつけない防衛ラインを完成しつつある。これを突破できなければ米軍は中国による台湾の武力侵攻を阻止できない。
PDIは沖縄から台湾、フィリピンなどを結ぶ第1列島線上に高度な精密兵器のネットワークを築き中国の防衛線突破を狙う。同軍は3月、2027年までの6年間で3兆円規模の予算を求めた。
◎色々と問題が…
「インド太平洋地域では中国が米国の軍事力を物量的に圧倒し、米軍を寄せつけない防衛ラインを完成しつつある」と桃井総局長は言う。「インド太平洋地域」と言えば米国の西海岸沿いの海域まで含む。こうした広い範囲で「中国が米国の軍事力を物量的に圧倒」しているのか疑問だが、そうだとしよう。ただ「米軍を寄せつけない防衛ライン」がどこにあるのかこの記事では説明していない。
「インド太平洋地域」で「物量的に圧倒」しているのならば「防衛ライン」はアフリカ、北米、南米の近くにまで達するのが自然だろう。
しかし米国の「PDI」は「沖縄から台湾、フィリピンなどを結ぶ第1列島線上に高度な精密兵器のネットワークを築き中国の防衛線突破を狙う」らしい。これから判断すると、中国の「防衛ライン」はものすごく中国寄りだ。「台湾」さえ入っていないと読み取れる。
どうして「物量的に圧倒」している側が自国領土の近くに「防衛ライン」を設定し、弱者であるはずの米国が自国から遠い「第1列島線上」に「高度な精密兵器のネットワークを築き中国の防衛線突破を狙う」のか。辻褄が合っていない。
そもそも中国は「米軍を寄せつけない防衛ラインを完成しつつある」はずだ。核攻撃を受けてもそれらを全て撃退できる能力をほぼ持っているのだろう。そんな凄い中国に対して「高度な精密兵器のネットワーク」を築いたぐらいで「防衛ライン」を突破できるものなのか。
「これ(中国の防衛ライン)を突破できなければ米軍は中国による台湾の武力侵攻を阻止できない」という見立てもおかしい。「第1列島線上」に「高度な精密兵器のネットワークを築」くのならば、「台湾」は米国の勢力圏内に入っているとも取れる。だとすると「防衛線突破を狙う」必要はない。「台湾」が中国の「防衛ライン」の外側にあるのならば、米国は「台湾」を守ればいいだけだ。「防衛ライン」を突破して中国本土に攻め込む必要は基本的にない。
同じ日の特集面に載った「台湾有事 備えはあるか~米中台の軍事力、中国優位が鮮明」という記事によると、中国は「『第一列島線』を自国防衛の最低ライン」と定めているようで、記事に付けた地図を見ると「台湾」は「ライン」の内側になっている。なので、この前提でも考えてみよう。
米国主導の「高度な精密兵器のネットワーク」に「台湾」を含むのならば、その「ネットワーク」が完成した時点で米国による「防衛線突破」はできている。「ライン」の内側に米国側が「高度な精密兵器のネットワーク」を築いているのだから、中国の「防衛線」は破られている。
結局、どう見るべきなのかよく分からない。桃井総局長の説明が拙いからだ。桃井総局長自身の考えがきちんとまとまっているのかも怪しい。なので結論は変わらない。桃井総局長は書き手としては退くべきだ。管理職として、しっかり頑張ってほしい。
※今回取り上げた記事「新時代の日米(下)政府と企業に問う覚悟~中国、制裁カードで威嚇」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210421&ng=DGKKZO71208640R20C21A4MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。桃井裕理記者への評価はE(大いに問題あり)を維持する。桃井総局長に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「米ロ関係が最悪」? 日経 桃井裕理記者「風見鶏」に異議ありhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_1.html
問題多い日経 桃井裕理政治部次長の「風見鶏~『東芝ココム』はまた起きる」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_19.html
日経「風見鶏~『台湾有事』と経済安保」に見える桃井裕理記者の誤解https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_18.html
台湾有事で「最悪の想定」が米中にらみあい? 日経 桃井裕理記者に感じる限界https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_19.html
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