2021年3月4日木曜日

「スウェーデンの集団免疫獲得は失敗」に根拠欠く週刊ダイヤモンド野村聖子記者

 スウェーデンの新型コロナウイルス対策は誤解されやすいようだ。週刊ダイヤモンド3月6日号の特集「最新!コロナ防衛術 免疫力の嘘ホント」でも野村聖子記者がおかしな説明をしている。

片の瀬橋

【ダイヤモンドの記事】

「ワクチンなしでも、みんなでコロナにかかれば集団免疫はもっと早く獲得できるのでは?」と思うかもしれないが、その道を選択したスウェーデンは冬に感染者、死亡者共に急増、作戦は失敗した。

コロナから解放されるにはワクチン以外、われわれに道は残されていないのだ。


◎関係ない話をされても…

記事の中で「集団免疫とは、ある集団の中で免疫を持つ人の割合がある一定割合以上に達し、その集団内で感染が拡大しにくい状態になったことを指す言葉だ」と野村記者も書いている。ならば「集団免疫」を「獲得」できたかどうかは「免疫を持つ人の割合」で見るしかない。

なのに「感染者、死亡者共に急増、作戦は失敗した」と書いている。「感染者、死亡者共に急増」したことと「集団免疫」の「獲得」は矛盾しない。「感染者」が「急増」したのならば「集団免疫」の「獲得」に向けて前進したとも言える。なぜ「免疫を持つ人の割合」に触れないのか。

「集団免疫の獲得=コロナからの解放」と見なすのであれば「コロナから解放されるにはワクチン以外、われわれに道は残されていない」と考える必要はない。「みんなでコロナにかかれば」済む。野村記者は「ワクチン」接種が進むことを望んでいるのだろう。だからと言って無理のある説明をしてはダメだ。

付け加えると「免疫を持つ人の割合がある一定割合以上に達し」と書くと「割合」が重複してしまう。「ある」も不要。「免疫を持つ人の割合が一定以上に達し」でいい。

野村記者は「その道を選択したスウェーデン」とも書いているが、「スウェーデン」が「集団免疫」の「獲得」を目指したのかも疑問だ。

昨年7月10日付の「集団免疫でなく持続性追求~元駐スウェーデン大使 渡辺芳樹氏」というの日経の記事では「スウェーデンは今回の新型コロナウイルス対策で集団免疫を獲得する戦略をとったわけではない。一時は70歳以上に外出自粛勧告を出し、規制を順次強め50人以上の集会も禁止した。ただ、欧州のほかの国のような都市封鎖(ロックダウン)はしなかった」と「渡辺芳樹氏」が述べている。

また、文藝春秋の昨年8月号に載った「スウェーデン『集団免疫作戦』のウソ」という記事で医師・疫学研究者の上田ピーター氏は以下のように記している。

まずスウェーデンの政策に関して、世界では『強制的なロックダウンを避けて独自路線を採った』『集団免疫の獲得を目指して、なるべく多くの人が感染することで事態を早期に収束させようとしたが、結局、失敗に終わった』と報じられています。しかし、こうした『集団免疫論』は、公式には一度も表明されていません

渡辺氏や上田氏が間違っていたり、記事掲載後にスウェーデンが政策を変更したりといった可能性は残る。本当にスウェーデンは「その道を選択した」のか。野村記者はしっかり確認したのだろうか。


※今回取り上げた記事「免疫とコロナが分かる~ワクチン&治療薬最前線」


※記事の評価はD(問題あり)。野村聖子記者への評価はDを維持する。野村記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

週刊ダイヤモンド「不妊治療最前線」野村聖子記者に異議ありhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_16.html

回答までに半年を要した週刊ダイヤモンドの特集「医者&医学部 最新序列」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/blog-post_7.html

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