日本経済新聞の田村正之編集委員が安定感を増してきている。以前の田村編集委員は「金融業界の回し者」とも言える存在だったが、最近は投資初心者が読んでためになる記事を世に送り出し続けている。20日の朝刊マネーのまなび面に載った「トップストーリー~株3万円 長期投資で果実 株主への利益配分大きく」という記事もそうだ。特に読んでほしいのが以下のくだりだ。
平戸城 |
【日経の記事】
日本株が上昇基調に戻ったとはいえ、もちろん日本株だけに投資する必要はない。例えば米国のROEは15~20%程度と高い時期が多い。効率的に稼ぐので、BPSの積み上がるピッチも日本より早い。10年以降のPBRの平均は2.8倍と日本を上回る。
それでも日本株が今後も長期で他の国より上昇率が劣るとは限らない。少子高齢化も背景に日本企業の長期の成長力は海外より低い可能性はあるが、世界の投資家の大部分が「日本の低成長」は予想に織り込み済み。株価の騰落はこうした予想と現実との差も反映する。日本企業の実際の業績が海外展開や経営効率化で予想を上回れば株価は上がる公算が大きい。
グラフCでバブルの清算を終えた10年以降でみると、少子高齢化は相変わらずだが日経平均の上昇率は世界株や新興国株を上回った。1990年以降の「大負け」が強調されがちだが成績は時期により異なる。分散投資の一部で日本株を持ち続けることは大切だ。
◎ここは参考にしたい
「株価の騰落はこうした予想と現実との差も反映する。日本企業の実際の業績が海外展開や経営効率化で予想を上回れば株価は上がる公算が大きい」という指摘は当たり前だとも思えるが、忘れがちでもある。個別銘柄でも同じだ。成長性が高そうに見える銘柄に投資したくなるが、そういう銘柄は既に成長性を織り込んで高い株価となっている。「日本は人口も減るし成長力に欠ける。だから日本株への投資は避けよう」という助言は正しそうに聞こえるが、参考にすべき意見ではない。
最後の段落の「個別の国の株価の動向を当て続けるのは極めて困難。当てる自信のない人は、世界全体の株価指数に連動する低コストのインデックス型投信を時間を分散して買い、長期保有するのも手だ」というくだりは少し引っかかった。「時間を分散」させることが有効だと田村編集委員は考えているのだろう。
個人的には「時間を分散」させても特にいいことはないと見ている。「『株価は長期的に上昇する』というセオリー」という説明が記事には出てくる。この「セオリー」を前提にするならば、投資に充てられる資金が手元にある場合はすぐに投資するのが合理的だ。
この辺りに関して田村編集委員の考えを紙面で確認してみたい気もする。今後に期待しよう。
※今回取り上げた記事「トップストーリー~株3万円 長期投資で果実 株主への利益配分大きく」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210220&ng=DGKKZO69258020Z10C21A2PPK000
※記事の評価はB(優れている)。田村正之編集委員への評価は特例としてF(根本的な欠陥あり)からBへ引き上げる。田村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「購買力平価」に関する日経 田村正之編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/04/blog-post_20.html
リバランスは年1回? 日経 田村正之編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_1.html
無意味な結論 日経 田村正之編集委員「マネー底流潮流」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_26.html
なぜETFは無視? 日経 田村正之編集委員の「真相深層」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_24.html
功罪相半ば 日経 田村正之編集委員「投信のコスト革命」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_84.html
投資初心者にも薦められる日経 田村正之編集委員の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_64.html
「実質実効レート」の記事で日経 田村正之編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_10.html
ミスへの対応で問われる日経 田村正之編集委員の真価(http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/04/blog-post_58.html)
日経 田村正之編集委員が勧める「積み立て投資」に異議
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_2.html
「投信おまかせ革命」を煽る日経 田村正之編集委員の罪(http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_3.html)
運用の「腕」は判別可能?日経 田村正之編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_21.html
「お金のデザイン」を持ち上げる日経 田村正之編集委員の罪
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_61.html
「積み立て優位」に無理がある日経 田村正之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_6.html
「金融業界の回し者」から変われるか 日経 田村正之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_26.html
「金融業界の回し者」日経 田村正之編集委員に好ましい変化
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_14.html
「リスク」と「債券」の説明に難あり 日経 田村正之編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_28.html
特例とはいえF→Bはいかがなものでしょうか。記事自体もBランクはよく見すぎ。バイアスがかかっていると思うのですが。
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