2020年12月23日水曜日

材料が弱すぎるFACTA「老害撒き散らす『近鉄の暴君』」

個人的にはヨイショ記事より批判記事が好きだ。しかし他者を批判するのだから、きちんと根拠は示すべきだし表現にも配慮すべきだ。FACTA2021年1月号に載った「老害撒き散らす『近鉄の暴君』」という記事はそれができていない。「老害」「暴君」という言葉はできれば使ってほしくない。使うのならば「老害」「暴君」だと納得できる十分な材料が欲しい。

有明海

記事の一部を見ていこう。

【FACTAの記事】

近鉄GHDの足を引っ張ったのは上場旅行会社のKNT︱­CTホールディングスだ。21年3月期の連結最終損益が170億円の赤字を見込み、子会社合併や賞与削減などで22年度に200億円のコストを削減する。約7千人いる社員は24年度末までに約3分の2に減らし、22年度入社の新卒採用は取りやめる。店舗138店は約3分の1に縮小する。危機的状況だ。

原因は社長・会長として13年間、近鉄GHDに君臨する小林哲也会長(77)にある。

とにかく怖い。悪い報告を持っていくと怒鳴りつけ、罵倒する。KNT︱CTは足がすくみ、早めのリストラで手が打てなかった。同じことが百貨店や不動産など近鉄グループ各社にも起きて赤字が雪ダルマ式に膨らんでいった。


◎それだけ?

悪い報告を持っていくと怒鳴りつけ、罵倒する」と書いてあるだけで具体性に欠ける。「なんでこうなるんだ。この前と話が違うじゃないか。どうしてきちんとできないんだ」といった程度の話かもしれない。この材料だけで「暴君」はさすがに厳しい。他に材料が出てくるのかと思って読み進めたが、結局「暴君」に関してはこれだけだ。

小林哲也会長」が「自分に都合がいい人事」をやったともFACTAは訴える。これも根拠は薄弱だ。


【FACTAの記事】

少林寺拳法オンラインマガジン(16年6月28日付)のインタビューでリーダー像を「いちばん大切なのは責任を回避しないこと。俺が責任を取るから心配するなという姿勢が大事」「この人は信頼できない、と思われるとその組織は崩壊する」と説いた。その決してあってはいけない現象が現在、近鉄GHDで起きている。

「公平であることが大事で、好き嫌いや、自分に都合がいいように考えるような人は絶対にダメ」とも語ったが、今年のトップ交代で「自分に都合がいい人事」をやった。16年に傘下の三重交通グループホールディングス社長に出していた小倉敏秀氏(65)を4年で呼び戻し、近鉄GHD社長に据えた。社長だった吉田昌功社長(68)を近鉄不動産会長に放逐し、自らは会長で留任し、さらに社長交代のどさくさに紛れて新設のCEO(最高経営責任者)に就いた


◎どこが「自分に都合がいい人事」?

どこが「自分に都合がいい人事」なのかよく分からない。「小倉敏秀氏(65)を4年で呼び戻し、近鉄GHD社長に据えた」上で「社長だった吉田昌功社長(68)を近鉄不動産会長に放逐」したのはなぜ「自分に都合がいい」と言えるのか説明がない。

新設のCEO(最高経営責任者)に就いた」のは「自分に都合がいい人事」かもしれないが、元々が実質的な最高権力者だったのならば大きな変化はない。「決してあってはいけない現象が現在、近鉄GHDで起きている」とまで言うのならば、もう少ししっかりした材料が欲しい。

記事の結論部分も頂けない。


【FACTAの記事】

小林会長は大手前高校同窓会のホームページで「毎朝、CDに録音した6種類の体操をやる」と打ち明けた。「ラジオ体操第1」「ラジオ体操第2」「みんなの体操」などを30分ぐらいかけて全てこなす。さらに30分ほど近所をウォーキング。入浴し、仏壇と神棚に手を合わせてから軽く朝食をとり出勤する。内視鏡手術で良性腫瘍を切除してから酒をやめた。カラオケで大好きな軍歌を歌う時に少し飲む程度だ。

これだけ体に気を使い、神仏の加護を願えば長生きしてしまう。近鉄GHD社員3万人(連結)にとって最大の悩みである


◎早く死ぬべき?

小林会長」が「長生きしてしまう」ことが「近鉄GHD社員3万人(連結)にとって最大の悩み」と言い切っている。どうやって「社員3万人」の意思を確認したのか。「小林会長」の死を「社員3万人」が願っているかような書き方は「社員」にも「小林会長」にも失礼だ。

百歩譲って「社員3万人」のほとんどが「小林会長」の「長生き」を懸念しているとしても、それを書くべきか疑問だ。きちんと事実関係を確認していない場合は、さらに罪深い。


※今回取り上げた記事「老害撒き散らす『近鉄の暴君』」https://facta.co.jp/article/202101018.html


※記事の評価はD(問題あり)

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