日本経済新聞は読者からの間違い指摘を当たり前のように無視してきた。長く続く悪しき伝統だ。改まる気配はない。紙面に載る訂正で見えるのは氷山の一角に過ぎない。記事を書かれた当事者らから直接の抗議を受けると訂正が出る可能性は高まるが、一般読者からの指摘の多くは握り潰してしまうのが常だ。
中之島公園内にあるGARB weeks |
以上のことが事実と反するならば名誉棄損に当たるだろう。だが訴訟リスクはほぼゼロだ。事実だと裏付ける材料が山のようにあるからだ。だから日経としては沈黙を決め込むしかない。
そんな新聞社が一国の首相の「説明不足」を責めて説得力が出るだろうか。5日の朝刊1面に載ったコラム「春秋」では以下のように書いている。
【日経の記事】
日本人は背中が好きだ。師匠の生きざまは背中で学び、親の背を見て子は育つ。高倉健さんも緒形拳さんも、背中で演技ができる名優と評された。だからといって後ろ姿で何かを語ろうとしたわけではなかろう。先月の末、菅義偉首相が見せた背中が記憶に残っている。
場所は官邸のエントランスだった。新型コロナの感染拡大を受け、マスク着用などの対策を改めて呼びかけた直後、記者団から追加の質問が相次いだ。だが首相はそれらにまったく応じることなく、足早に立ち去った。記者会見を開かない。国会の答弁では官僚のメモを棒読みする。説明に対する首相の姿勢は評判が悪い。
そんな菅さんが、国会が事実上閉幕したきのう、就任以来2回目となる会見に臨んだ。官邸での「ぶら下がり」と呼ばれる一方的な発信とは違う、久しぶりのやり取りの場である。コロナ対策や「桜を見る会」の前夜祭をめぐる疑惑などで質疑応答がなされたが、自らの思い、自らの言葉で語ったようには聞こえなかった。
ドイツのメルケル首相や米ニューヨーク州のクオモ知事など、コロナ禍の中で発する海外の指導者の言葉に心打たれることがある。国民性の違いなどもあり同じようにはいかないだろうが、菅さんにもセールスポイントであるたたき上げならではの、実直な言葉を期待したい。説明不足は国民に「背を向ける」ことになる。
◎読者に「背を向ける」新聞社に言われても…
「記者会見を開かない。国会の答弁では官僚のメモを棒読みする。説明に対する首相の姿勢は評判が悪い」と筆者は言う。
ならば読者からの間違い指摘を無視して多くのミスを放置してきた自分たちはどうなのか。この問いに日経は答えられるのか。答えられないのに「首相の姿勢」を問題視する資格があるのか。
「(首相の)説明不足は国民に『背を向ける』ことになる」のは、その通りだ。ならば新聞社の「説明不足」は読者に「背を向ける」ことにはならないのか。
「人の振り見て我が振り直せ」
この言葉を日経には贈りたい。
どうしても「我が振り」を直せないのならば他者への批判は控えるべきだ。今の日経に他者の「説明不足」を責める資格はない。
※今回取り上げた記事「春秋」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201205&ng=DGKKZO67048980V01C20A2MM8000
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