日本経済新聞の梶原誠氏を「書きたいことが枯渇した書き手」として見ている。19日の朝刊オピニオン2面に載った「Deep Insight~株高が迫る『復旧より復興』」という記事を読んでも、その評価は変わらない。漠然とした話が多いのも訴えたいことが希薄だからだろう。記事の一部を見ていく。
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【日経の記事】
投資家の期待は、日経平均が29年ぶりの高値を回復した日本企業にも向かっている。コロナで経営環境が一変し、世界の企業がビジネスモデルを変えざるを得ない今は、「失われた30年」で開いた世界との差を埋める最後のチャンスに違いない。
危機だからこそ思い出すべき教訓がある。復旧止まりへの誘惑に負け、復興できなかった1995年の阪神大震災後の神戸港だ。
◎分からないことだらけだが…
「『失われた30年』で開いた世界との差を埋める最後のチャンスに違いない」と言うが、分からないことだらけだ。「『失われた30年』で開いた世界との差」とは何なのだろう。株式時価総額なのかGDPなのか、あるいは競争力のようなものなのか。「世界」とは「日本以外の全ての国」と理解すればいいのか。「世界」の中で日本は何かの指標が最下位なのか。この辺りはぼんやりとしたままだ。
なぜ「最後のチャンス」になるのかの説明はもちろんない。「今」が本当に「最後のチャンス」だとして、その期限はいつなのか。来年なのか、あるいは10年後なのか。しかし梶原氏は何も教えてくれない。
普通に考えれば「最後のチャンス」ではないだろう。例えば2100年の日本で「振り返ると世界との差を埋めるのは2020年が最後のチャンスだったなぁ。あれから80年も経って差を埋める可能性は完全にゼロになっちゃったよ」といった話になっているだろうか。日本が国としての形を保っている限り「チャンス」はいつの時代にもあると思える。
記事の続きを見ていこう。
【日経の記事】
94年にはコンテナの取り扱いで世界6位だった同港は再建の際、大型船の誘致でのし上がる釜山や高雄に対抗して水深を深くしようとした。だが「焼け太りは不可」と、元通りへの修復までしか国費が出なかった。順位は19年、67位まで下がっている。危機という改革の機会を生かせなければ衰退するのは、企業も同じだ。
日本企業のデジタル復興を測る「温度計」といえる東証1部上場企業がある。企業や自治体にデジタル化を指南するチェンジだ。
13日に発表した20年9月期決算は売上高が前期比66%増、純利益も4.1倍へと急増した。主要顧客の運輸業向けの業務はコロナによる業績悪化で失速したが、途中からは、テレワークの導入事業が幅広い業種で伸びて盛り返した。「生き残りをかけた企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)投資」。福留大士社長は決算説明会で要因を振り返った。
興味深いのは株価だ。9月28日には年初から9倍近くまで急騰して上場来高値をつけたが、その後は30%以上下げるなど荒い展開が続く。日本企業のデジタル復興への姿勢が本物なのか、市場はまだ確信を持てていない。
改革して復興を目指す企業と、復旧に甘んじる企業。待望のワクチンが見えてくるとともに、マネーによる選別の号砲が鳴ったように見える。
◎最近になって「号砲が鳴った」?
「マネーによる選別の号砲が鳴った」のは最近だと梶原氏は見ているようだ。しかし常識的に考えれば「マネーによる選別」に休みはない。訴えたいことがないから、こうした説得力に欠ける漠然とした結びになってしまうのだろう。
「神戸港」と「チェンジ」の話をした後に「マネーによる選別の号砲が鳴ったように見える」とつなげているが、「マネーによる選別の号砲が鳴った」と感じられる事例にはなっていない。取って付けたような結論が残念だ。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~株高が迫る『復旧より復興』」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201119&ng=DGKKZO66380520Y0A111C2TCT000
※記事の評価はD(問題あり)。梶原誠氏への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。梶原氏については以下の投稿も参照してほしい。
日経 梶原誠編集委員に感じる限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_14.html
読む方も辛い 日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post.html
日経 梶原誠編集委員の「一目均衡」に見えるご都合主義
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_17.html
ネタに困って自己複製に走る日経 梶原誠編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_18.html
似た中身で3回?日経 梶原誠編集委員に残る流用疑惑
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_19.html
勝者なのに「善戦」? 日経 梶原誠編集委員「内向く世界」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_26.html
国防費は「歳入」の一部? 日経 梶原誠編集委員の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html
「時価総額のGDP比」巡る日経 梶原誠氏の勘違い
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/gdp.html
日経 梶原誠氏「グローバル・ファーストへ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/04/blog-post_64.html
「米国は中国を弱小国と見ていた」と日経 梶原誠氏は言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_67.html
日経 梶原誠氏「ロス米商務長官の今と昔」に感じる無意味
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post.html
ツッコミどころ多い日経 梶原誠氏の「Deep Insight」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/deep-insight.html
低い韓国債利回りを日経 梶原誠氏は「謎」と言うが…
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_8.html
「地域独占」の銀行がある? 日経 梶原誠氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html
日経 梶原誠氏「日本はジャンク債ゼロ」と訴える意味ある?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_25.html
「バブル崩壊後の最高値27年ぶり更新」と誤った日経 梶原誠氏
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/27.html
地銀は「無理な投資」でまだ失敗してない? 日経 梶原誠氏の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_56.html
「日産・ルノーの少数株主が納得」? 日経 梶原誠氏の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_13.html
「霞が関とのしがらみ」は東京限定? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight.html
「儒教資本主義のワナ」が強引すぎる日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/deep-insight_19.html
梶原誠氏による最終回も問題あり 日経1面連載「コロナ危機との戦い」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/1.html
色々と気になる日経 梶原誠氏「Deep Insight~起業家・北里柴三郎に学ぶ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight.html
「投資の常識」が分かってない? 日経 梶原誠氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/04/deep-insight_16.html
「気象予測の力」で「投資家として大暴れできる」と日経 梶原誠氏は言うが…https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_16.html
「世界がスルーした東京市場のマヒ」に無理がある日経 梶原誠氏「Deep Insight」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/deep-insight.html
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