2020年10月26日月曜日

「新型・胃袋争奪戦が勃発」に無理がある日経 中村直文編集委員「経営の視点」

26日の日本経済新聞朝刊企業面に載った「経営の視点~新型・胃袋争奪戦が勃発 業態・場所超え顧客に接近」という記事で中村直文編集委員が苦しい分析を披露している。問題のくだりを見ていこう。

新田大橋(大川市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】

日本惣菜協会によると食市場のシーン別内訳は、自宅で調理して食べる内食が約36兆円、弁当や総菜などの中食が約10兆円、外食が約26兆円。近年はコンビニエンスストアがイートインをつくったり、スーパーがレストランを運営したり、垣根が低くなっていた。


◎「近年」の話?

近年はコンビニエンスストアがイートインをつくったり、スーパーがレストランを運営したり、垣根が低くなっていた」という説明がまず引っかかる。ミニストップの「イートイン」はいつからあるのか。イトーヨーカ堂がデニーズの出店を始めたはいつなのか。それが「近年」でないのは中村編集委員も知っているはずだが…。

続きを見ていく。


【日経の記事】

新型コロナでこれが加速。内食から中食、外食に向かっていた流れが逆流している。国内人口の伸び率が鈍化してきた1980年代後半から食品市場では「ストマックウオー」(胃袋争奪戦)という言葉が生まれていた。今や新型の胃袋争奪戦が勃発したのだ。

仮に外食市場が15%縮むとざっと4兆円が流出する計算になる。ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長は「消費者は好きなときに、好きな場所で好きなモノを食べることができる。食ビジネスはデジタル化で時間と場所から解放された」と指摘する。


◎「新型」と言える?

人口が増えない中で限られた「胃袋」需要を奪い合う状況を「『ストマックウオー』(胃袋争奪戦)」と呼ぶならば、ここに来ての質的変化はない。「新型コロナ」の影響で「内食から中食、外食に向かっていた流れが逆流している」としても戦況が変わっているだけだ。そこは中村編集委員も気付いているのか「デジタル化」を持ち出している。

消費者は好きなときに、好きな場所で好きなモノを食べることができる。食ビジネスはデジタル化で時間と場所から解放された」という「ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長」の見立てが的を射ているのならば「新型の胃袋争奪戦が勃発した」と見ていいかもしれない。しかし、「菊地唯夫会長」の認識は的外れと言うほかない。

食ビジネスはデジタル化で時間と場所から解放された」のならば、日本の外食店は「デジタル化」によって世界各地に24時間の出前が可能になっているはずだ。そもそも「ロイヤルホールディングス」の系列店舗で出している料理は客が「好きなときに、好きな場所で」食べられるようになっているのか。中村編集委員も少し考えれば分かるはずだ。

なのに「業界の垣根を壊し、時間と場所からも解放された新型の胃袋争奪戦はゼロベースでの戦略見直しを突きつけている」と記事を締めてしまう。ネタに困って無理に話を捻り出したのだとは思うが、説得力がなさすぎる。


※今回取り上げた記事「経営の視点~新型・胃袋争奪戦が勃発 業態・場所超え顧客に接近

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20201026&ng=DGKKZO65376050T21C20A0TJC000


※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。


無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html

「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html

「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html

「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html

キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html

分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html

「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html

「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html

日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html

「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html

「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html

日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html

「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html

渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html

早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html

「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/blog-post_23.html

野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/11/blog-post_15.html

「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/01/blog-post_23.html

平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/deep-insight.html

拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/02/blog-post_28.html

「コロナ不況」勝ち組は「外資系企業ばかり」と日経 中村直文編集委員は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/06/blog-post.html

データでの裏付けを放棄した日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/07/blog-post_17.html

「バンクシー作品は描いた場所でしか鑑賞できない」と誤解した日経 中村直文編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/09/blog-post_11.html

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