21日の日本経済新聞朝刊企業面に載った「積水化学、航空部品生産を米で再編~配管工場を集約」という記事は問題が多い。「配管工場を集約」するのがニュースの柱だが、これに関する情報が少な過ぎる。
九州佐賀国際空港※写真と本文は無関係です |
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
積水化学工業は米国での航空機部品生産体制を見直す。配管(ダクト)を製造する拠点を2カ所から1カ所に集約する。新型コロナウイルスによる旅客需要の低迷で、航空機部品の受注は落ち込んでいる。積水化学は合理化を急ぎ、収益への影響を最小限にとどめる。
2019年に買収した米航空機部品メーカー、AIMエアロスペース(現セキスイエアロスペース)の生産体制を再編する。同社は米ワシントン州に航空機向けの複合材工場に加え、2つの配管工場を持つ。配管工場は老朽化を理由に買収当初から統合を計画していたが、新型コロナによる需要低迷を受けて「前倒しで合理化する」(積水化学の加藤敬太社長)。
積水化学は自社の炭素繊維複合材の用途拡大を狙い、19年に旧AIM社を買収、航空機部品市場に本格参入した。ただ、米中貿易摩擦を受けた世界経済の変調やその後の新型コロナの影響で、主要取引先の米ボーイングが航空機生産を縮小。部品需要も低迷している。
積水化学は5月に発表した3カ年の中期経営計画で、22年度の売上高を19年度比8%増の1兆2200億円、営業利益を同25%増の1100億円にする目標を掲げている。航空機向け素材事業を将来の収益の柱に育てる考えだが、当面は「航空機以外の医療機器向けなどへの供給を拡大させる」(加藤社長)方針だ。
◎色々と書いてはいるが…
新聞紙面で50行とそこそこのスペースを使っているが、入れるべき情報がほとんど盛り込まれていない。
「積水化学工業は米国での航空機部品生産体制を見直す。配管(ダクト)を製造する拠点を2カ所から1カ所に集約する」という話で記事を作る場合、どんな情報を入れるべきか。列挙してみたい。
(1)いつ「集約する」?
記事ではいつ「集約する」か言及していない。「配管工場は老朽化を理由に買収当初から統合を計画していたが、新型コロナによる需要低迷を受けて『前倒しで合理化する』(積水化学の加藤敬太社長)」との記述から判断すると、「集約」自体は既定路線で時期が早まっただけとも取れる。
だとしたら、なおさら時期が重要だ。これまでは「集約」の時期をどう考えていたのか。それをどの程度「前倒し」するのか。そこは欲しい。
(2)どう「集約する」?
「配管工場」を「2つ」とも閉めて、別の場所に新工場を建設する形での「集約」なのか。それとも既存の「配管工場」を1つ残して「集約」するのか。後者の場合、「2つ」のうちどちらを残すのか。これも記事では触れていない。
(3)生産規模はどうなる?
「拠点を2カ所から1カ所に集約する」と生産規模はどうなるのか。半減なのか。仮にA工場が生産量200でB工場が100だとしよう。「老朽化」が激しいB工場を閉鎖しても、生産規模は半減しない。B工場の生産品目の一部をA工場に移し「集約」後の生産規模が250となってもおかしくない。
その辺りも記事からは情報が得られない。
(4)業績への影響は?
「積水化学は合理化を急ぎ、収益への影響を最小限にとどめる」と記事では書いている。ならば「集約」によってどの程度の「合理化」効果が出るのかも入れたい。工場を閉鎖するのだから、「合理化」効果だけでなく損失も考える必要がある。従業員をどうするかも気になる。だが、やはり情報はない。
記事の最後の段落は丸ごと落としていい。その代わりに上記のような情報を盛り込むべきだ。「時期などは未定」と言うのならば、そのことを記事中で明示すべきだ。
※今回取り上げた記事「積水化学、航空部品生産を米で再編~配管工場を集約」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200921&ng=DGKKZO64098630Q0A920C2TJC000
※記事の評価はD(問題あり)
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