2020年8月29日土曜日

漠然とした訴えが残念な日経 吉野直也政治部長「政策遂行、切れ目なく」

安倍晋三首相の辞任表明を受けて慌てて書いたのだとは思う。そこに同情の余地はあるが、29日の日本経済新聞朝刊1面に吉野直也政治部長が書いた「政策遂行、切れ目なく」という記事は、漠然とした話が多過ぎる。特に言いたいことはないのだろう。仕方なく紙面を埋めてみた感じが拭えない。
豪雨被害を受けた天ケ瀬温泉(大分県日田市)
           ※写真と本文は無関係です

記事の一部を見ていこう。

【日経の記事】

28日の株価の下落は裏を返せば市場が首相の経済政策「アベノミクス」に一定の評価を与えていたことになる。外交も同様だ。トランプ米大統領との蜜月はかつてない強固な日米同盟関係を築き、日本の外交力を高めた

次期首相に積み残された課題は多い。新型コロナの克服と東京五輪・パラリンピックの開催は宿願だ。一方でコロナ対策の巨額な財政出動で構造改革は遅滞する。脱デフレを宣言し、安定的な成長を実現する総合戦略を示さなければならない。


◎「外交力」が高まった?

外交も同様だ」と書いているので「市場」は「首相」の外交政策にも「一定の評価を与えていた」と吉野部長は見ているのだろう。だが、なぜそう言えるのかは不明。そして「かつてない強固な日米同盟関係を築き、日本の外交力を高めた」と言い切っている。

個人的には安倍政権下で「日本の外交力」が高まった印象はない。「強固な日米同盟関係」は、言い換えれば「強固な」対米追従路線だ。「俺の親分は強いんだぞ。だから俺に逆らうな」と迫れば、他国が言うことを聞いてくれるとの考え方なのか。それで韓国や北朝鮮に対し上手く「日本の外交力」を行使できたのか。

コロナ対策の巨額な財政出動で構造改革は遅滞する」という説明も腑に落ちない。まず「構造改革」が何を指すのか明確ではない。「構造改革」が例えば働き方改革のようなものならば「巨額な財政出動」は「改革」の実行を難しくするとは限らない。

さらに続きを見ていこう。

【日経の記事】

外交も待ったなしだ。中国は戦後の国際秩序を形作ってきた米国の覇権に挑む。南シナ海での軍事的な緊張で米中対立は経済から安全保障の領域に広がる

沖縄県・尖閣諸島付近を含む東シナ海で示威行動する中国船にも警戒する必要がある。サイバー攻撃も北東アジアの軍事バランスを揺るがす。

日本の政局が混乱すれば、日米同盟に隙をつくり、北東アジアに力の空白を生むことになりかねない。日米同盟の深化にも猶予はない。



◎どういう理屈?

南シナ海での軍事的な緊張で米中対立は経済から安全保障の領域に広がる」のであれば「戦後の国際秩序を形作ってきた米国の覇権に挑む」姿勢を見せる「中国」に対し、米国もしっかり対抗しようとしているはずだ。

だったら「北東アジアに力の空白を生む」事態は考えにくい。この「北東アジアに力の空白を生む」という状況が、そもそもよく分からない。例えば朝鮮半島を実効支配する主体がいなくなり、中国も米国も関与を避けるような状況になれば「力の空白」と言えるだろう。だが、現状では非常に考えにくい。

しかし「日本の政局が混乱」するだけで「北東アジアに力の空白を生むことになりかねない」と吉野部長は懸念する。「日米同盟に隙」ができるだけで「力の空白」が生まれるのか。どういうストーリーを描いているのだろうか。

「深く考えずに漠然と書いてみただけ」だとは思うが…。


※今回取り上げた記事「政策遂行、切れ目なく
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200829&ng=DGKKZO63204660Y0A820C2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。吉野直也部長への評価はDを維持する。吉野部長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

トランプ氏の発言を不正確に伝える日経 吉野直也記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_7.html

トランプ大統領「最初の審判」を誤解した日経 吉野直也次長
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_13.html

日経 吉野直也記者「風見鶏~歌姫がトランプ氏にNO」の残念な中身
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/no.html

「政敵」が首相を動かしてる? 日経 吉野直也記者「風見鶏」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_56.html

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