2020年8月22日土曜日

秋元司議員は有罪確定? 推定無罪の原則忘れた日経コラム「春秋」

日本経済新聞朝刊1面のコラム「春秋」が22日に取り上げたのは、秋元司衆院議員が証人等買収の疑いで東京地検特捜部に逮捕された件。推定無罪の原則を忘れたかのような書き方が引っかかった。「秋元議員はこれまでの取材に『事件に私は一切関与していない』とコメントしている」と日経も報じている。容疑を認めていないケースでは特に慎重な対応が求められる。
冠水した国道210号線(福岡県久留米市)
          ※写真と本文は無関係です

春秋」の全文は以下の通り。

【日経の記事】

「ゴッドファーザー」「アンタッチャブル」「バラキ」……。いずれも名画である。共通点は、実話をちりばめたマフィアの物語。組織のボスたちは当局の訴追を逃れようと、実に荒っぽい仕事をする。裁判官・陪審員の買収や恐喝、証人の口封じなどやりたい放題だ。

組織犯罪にどう対処すべきか。今も昔も切実な問題だ。3年前を思い出していだたきたい。「テロ等準備罪」の当否で大もめにもめた末、改正組織犯罪処罰法が施行された。今夏開かれるはずの東京五輪のテロ対策を強化できる、と政府は胸を張ったものである。その改正法に同時に盛り込まれたのが「証人等買収罪」だ。

刑事事件でうその証言を働きかけ、対価を支払うことを禁じた。この条文が初めて適用されたのはテロリストでもマフィアでもなく現職の国会議員だった。自身が起訴されたカジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件で贈賄側の被告に虚偽の証言をする報酬として、1千万~2千万円の提供を持ちかけたという

選ばれた優秀な人。「選良」なる言葉が辞書にある。国会議員の美称だが、死語だろう。カジノに関連し札束を受け取り、今度は札束で司法手続きの公正を踏みにじろうとする。さながらマフィア映画の一場面のよう。組織犯罪処罰法とは――。政党という組織の構成員の悪事を裁く手段である。そう考えると、得心する


◎そんなに決め付けて大丈夫?

秋元司衆院議員の名前は出していないが、「この条文が初めて適用されたのはテロリストでもマフィアでもなく現職の国会議員だった」との記述から秋元議員について書いたのは明白だ。

自身が起訴されたカジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件で贈賄側の被告に虚偽の証言をする報酬として、1千万~2千万円の提供を持ちかけたという」「カジノに関連し札束を受け取り、今度は札束で司法手続きの公正を踏みにじろうとする。さながらマフィア映画の一場面のよう」と秋元議員を犯罪者扱いしているが、本人が容疑を否認していることには触れていない。

そして「組織犯罪処罰法とは――。政党という組織の構成員の悪事を裁く手段である。そう考えると、得心する」と記事を締めてしまう。これだと秋元議員は「悪事」を働いた「国会議員」にしか見えない。

実際そうなのかもしれないが、決め付けるのはまだ早い。本人の名誉に関わることなので慎重な書き方を心掛けてほしい。そういう恐れがこの「春秋」には全く見えない。そこが怖い。


※今回取り上げた記事「春秋
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200822&ng=DGKKZO62944190R20C20A8MM8000


※記事の評価はD(問題あり)

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