2020年5月11日月曜日

「コロナ後にドラッグストアは『安売り』しないかも」に説得力欠く森山真二氏

週刊ダイヤモンド5月16日号に森山真二氏が書いた「ダイヤモンド・オンライン発~コロナ後にドラッグストアはもう『安売り』をしないかもしれない理由」という記事は説得力に欠けた。その理由を記事にツッコミを入れながら解説したい。
筑後川の小森野橋(福岡県久留米市)
        ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

コロナ後に急速に再編が進みそうなのが、ドラッグストア業界だ。「ドラッグストアって、今はマスクとトイレットペーパーで潤っているんじゃないの」と思われる方も多いだろう。事実、コロナの影響でマスクを買い求めるお客や外出自粛で食品などを買うといったこともあり「今まで(ドラッグストアに)来ていなかった消費者が結構、来ている」(ウエルシアホールディングス〈HD〉の池野隆光会長)という。

その一方で、実は大手の寡占化が進み始めており、「生き残り」を懸けた再編の火種はくすぶっている。


◎「大手の寡占化」?

まず「大手の寡占化」が引っかかる。「大手による寡占化」ではなく「大手の寡占化」だ。中小の「ドラッグストア」はたくさんあるということか。だとすると市場の「寡占化」はあまり進んでいないことになる。その前提で考えていこう。

【ダイヤモンドの記事】

今年10月、マツモトキヨシHDがココカラファインと経営統合して業界トップに躍り出る。これを追う格好でツルハHDやウエルシアHD、さらにコスモス薬品が大量出店やM&A(企業の合併・買収)合戦を繰り広げている。大手の中でもコスモス薬品以外は中堅、中小のドラッグストアチェーンを傘下に入れ規模を膨らませており、コロナ後はこうした動きが加速するのは確かだろう


◎「コロナ」との関係は?

今回の記事は「コロナ後にドラッグストアはもう『安売り』をしないかもしれない理由」がテーマだ。「コロナ」がどう関係するかの説明は欲しい。しかし「大手の中でもコスモス薬品以外は中堅、中小のドラッグストアチェーンを傘下に入れ規模を膨らませており、コロナ後はこうした動きが加速するのは確かだろう」と書いているだけだ。これでは苦しい。

さらに続きを見ていく。

【ダイヤモンドの記事】

ドラッグストアの業界規模は7兆2744億円(2018年度)だから大手は当面、マツキヨHD・ココカラファイン連合の売上高1兆円を目指していく。仮に市場は上位3社に集約されるとして、1社当たりの売上高は2兆5000億円程度、少なくても2兆円の規模が最終目標になるだろう。

現在、大手のウエルシアHDが同8682億円、ツルハHDが8200億円(20年5月期見通し)、だから、この2社が組めば圧倒的なトップに躍り出て、マツキヨHD・ココカラ連合を圧倒的に上回ることができるし、中堅、中小のドラッグストアは、さらに大手の傘下入りを決断せざるを得ない、いわば業界再編の最終局面にあるといっていい


◎本当に「最終局面」?

多数の「中堅、中小のドラッグストア」があるのに「業界再編の最終局面」なのか。「上位3社に集約される」ところまであと一歩なのか。

さて、ここからが本題だ。

【ダイヤモンドの記事】

コロナ後に再編が加速し、上位3社に集約されたら、今でこそ「価格が安い」というイメージがあるドラッグストアの価格帯も変わりそうだ。

これについては、総合スーパー(GMS)の前例がある。GMSはかつて“安売り王”がごろごろいた。ダイエーしかり、ジャスコ(現イオン)しかり、西友などもそうだった。しかし、大規模小売店舗法という出店を規制する法律が敷かれ、競争がなくなり規模が拡大した途端、価格硬直性が生まれた


◎いつの話?

価格硬直性が生まれた」時期を明示していないのが困る。「大規模小売店舗法」の施行が1974年らしいので、その頃に「競争がなくなり」そして「価格硬直性が生まれた」との趣旨か。個人的な印象では、80年代以降も「GMS」は「競争」をしていた気がする。

さらに見ていく。

【ダイヤモンドの記事】

「スーパーは安くない」といわれ、ユニクロやディスカウント店の台頭を許した。本部が巨大化し、規模の利益を商品の質や価格に生かせなかったからだ。

今は価格競争バリバリのドラッグストア業界もコロナ後に集約が進み、競争がなくなれば、巨大化した本部を維持するためのコストが大きくなり、「低価格路線」を維持することはできなくなるだろう

小売りの再編、集約が進んだその先に待っているのは価格が硬直化した、決して安くはない、非常に暮らしにくい世界の到来かそう遠くないうちに答えは出る。


◎消費者の目で見ると…

大手の「ドラッグストア」で個人的によく利用するのが「コスモス薬品」だ。食品を中心に「低価格路線」を採っている。しかし消費者としては食品を買う時に「ドラッグストア」だけ見ている訳ではない。スーパーやディスカウントストアも「コスモス薬品」のライバルだ。

コスモス薬品」が「低価格路線」を維持するかどうかを「ドラッグストア」の中だけで考えても意味がない。「ドラッグストア」は元々の取扱商品である医薬品に関して基本的に「低価格路線」を採用していないので、なおさらだ。

ドラッグストア」以外も含めて分析しないと「答え」は出ない。


※今回取り上げた記事「ダイヤモンド・オンライン発~コロナ後にドラッグストアはもう『安売り』をしないかもしれない理由
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29341


※記事の評価はD(問題あり)。森山真二氏への評価も暫定でDとする。

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