グラバー園の旧自由亭(長崎市)※写真と本文は無関係 |
まずメーカーについて見ていこう。
【ダイヤモンドの記事】
1兆円を超すOTC市場。その利益は、ドラッグストアとメーカーでどう配分されるのだろうか。
例えば、第一三共の解熱鎮痛剤「ロキソニンS」のメーカー希望販売価格は12錠で648円(税抜き)だ。ところが、病院で処方された場合のロキソニンの公定薬価は1錠14.5円。12錠に換算しても174円にすぎない。
おまけにロキソニンのジェネリック医薬品の公定薬価は1錠5.6~9.6円で、成分はほとんど変わらない。そしてジェネリックのメーカーはこれでも利益が出る。「製造コストも先発薬と大して変わらない。大半のOTCの原価は数パーセント程度だ」と、製薬会社の関係者は打ち明ける。
加えて、新薬の場合は原価に研究開発費を乗せることもあるが、OTCは医療用医薬品での実績のあるものがほとんど。研究開発費の償却が済んでおり、原価コストはさらに安くなる。OTCは薬九層倍どころではないほど、もうかる商材なのだ。
◎利益率25%ならば…
記事に付けた「OTC医薬品の利益構造のイメージ」を見ると小売り段階の「売価800円」のうち「480円」はドラッグストアが取るので、メーカーの販売価格は320円になるのだろう。
「製造原価」は「40円」で確かに低い。だが、320円をメーカーの売値とすると「薬九層倍」には届かない。さらに「リベート・販促費」「広告宣伝費」「物流費など」を差し引くと「メーカーの利益」は「80円」しか残らない。
利益率25%はもちろん悪くない水準だ。しかし「薬九層倍どころではないほど、もうかる商材なのだ」と言うほどでもない。
「ドラッグストアが6割を取るOTC1兆円市場」という見出しも付いているし、「ドラッグストア」にとっての「もうかる商材」と訴えるのが記事の柱かもしれない。なので記事の続きを見ていこう。
【ダイヤモンドの記事】
この利益の塊であるOTCを、ドラッグストアは格安で仕入れているのである。
あるOTCメーカーの関係者によれば、「大手チェーンでは、販売価格に占めるドラッグストアの取り分は6割がスタートライン」。ここから交渉が始まり、さらにメーカー側は値下げを要求される。
ドラッグストアの取り分が7割を超えるケースも珍しくなく、値下げの代わりに、商品の売れた個数に応じて“販売奨励金”をメーカーが支払うケースもあるという。
一方、メーカーが力を入れるのは広告宣伝費で、メーカーの売り上げの10~15%を投入することはごく一般的な水準だ。
ドラッグストアの棚でよく見掛ける、芸能人を前面に押し出した販促用のPOP広告はメーカー側が用意したもの。メーカーの担当者が店舗を訪れ、棚作りを手掛けることもあるという。
このため店舗ではメーカーのブランド名ではなく、「(芸能人の)○○さんの薬を下さい」と指名されることも珍しくない。
こうした広告や販促への貢献をメーカーはドラッグストアに必死にアピールし、仕入れ値のダウンを何とか回避しようとする。
特売が大好きなドラッグストアでも、OTCを値下げする例は「10年以上前にはあったが、今は少ない。利益が減って経営も苦しくなるし、薬の安売りは消費者のイメージを下げる」(前出のOTCメーカー関係者)。
インバウンド激戦区である大阪・心斎橋など一部の地域を除き、OTCに関してはドラッグストア間での安売り競争はせず、“共存共栄”のスタンスを貫く。こうして出た利益が、コンビニやスーパーに対抗するために、食品を安く売る源泉となる。
◎粗利益も営業利益も「利益」だが…
「OTC医薬品」で得た利益が「食品を安く売る源泉」になっている面はあるだろう。しかし「売価800円」のうち「480円」を取るからと言って「もうかる商材」とは限らない。
イメージ図では「480円」を「ドラッグストアの利益」としている。これは一般的には「粗利益」だ。一方、「メーカーの利益」の「80円」は「広告宣伝費」などを差し引いた「営業利益」に近い。同列に比べられないものを同じように「利益」としているのが引っかかる。これだと「ドラッグストアの利益」が非常に大きく見えてしまう。
「メーカーの利益」の「80円」と比べるのならば「480円」から人件費などを引く必要がある(メーカーの「リベート・販促費」はドラッグストアの利益になる面もあるとは思うが、ここでは考慮しない)。そこでも大きな利益が残ると示せれば、「ドラッグストアの利益」の利益が大きいという話に説得力が出てくるのだが…
※今回取り上げた記事「薬九層倍どころではない、もうかる商材~ドラッグストアが6割を取るOTC1兆円市場の利益構造」
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/27497
※記事の評価はD(問題あり)。
0 件のコメント:
コメントを投稿