金華山黄金山神社(宮城県石巻市)※写真と本文は無関係 |
「『ホワイト国』を会社のタクシー券に例え」たくだりを見ていこう。
【日経ビジネスの記事】
日本政府が韓国を輸出管理上の優遇対象国、いわゆるホワイト国から除外したことで韓国が態度を硬化させた。この問題を、会社内のいざこざに例えて考えてみたい。
ホワイト国から除外されて憤る韓国は、タクシー券の支給を止められて逆上する経営幹部に似ている──。
会社内のもめ事と同類に扱うのは不謹慎かもしれないが、こう考えると一番しっくりくる。ホワイト国とは、兵器に転用される可能性のあるような戦略物資を含め、輸出手続きを簡略化している相手国のことを指す。先方の管理を信頼しているのが前提だ。
ところが韓国には半導体材料を実需以上に発注するなど、管理体制に疑わしい点があった。しかも、日本側の申し入れにもかかわらず、3年間も協議に応じてこなかった。日本政府は先ごろ、ホワイト国という言い方をやめて、貿易相手国を管理体制に応じてA~Dの4グループに分け、韓国をBとした。
これを会社内のトラブルに例えると、次のようになるだろう。
ある幹部が必要に応じてタクシーに乗れるよう、タクシー券を支給されていた。ところが最近、使用回数が増え、仕事以外でも使っているのではないかと疑惑が生じた。そこで経理担当者が問い合わせてみたが、協議に応じない。
会社側は「タクシー券の支給を止める。タクシーに乗る際には、その都度、領収書をもらって精算してほしい」と通達した。すると、この幹部は、「会社は自分のことを信用していない。これでは仕事ができない」と逆上した。
こう置き換えると、日本側の主張に分があるのは、明白だろう。
◎相似形でないと…
「例え」がしっくり来るのは、例える対象と「例え」が相似形になっている場合だ。首相とその他の大臣の関係を、プロ野球の監督とコーチの関係に「例え」たりすれば相似形と言える。しかし今回の記事ではそうなっていない。
「会社内のもめ事と同類に扱うのは不謹慎」と思わない。「例え」が適切ならば、それでいい。ただ「ホワイト国から除外されて憤る韓国」を「タクシー券の支給を止められて逆上する経営幹部」に「例え」るのは無理がある。
この「例え」だと「日本」は「会社」だ。「経営幹部(社員だと仮定する)」とは労働契約を結んでおり、「会社」は「経営幹部」に対して業務命令権を持っている。
「韓国」が日本の自治体の1つで、日本政府の監督下にあるのならば、今回の「例え」でいい。しかし「韓国」は独立国だ。「会社」で例えるならば、独立した関係にある2つの会社の取引条件などを使うしかない。
さらに細かく言うと「タクシーに乗る際には、その都度、領収書をもらって精算してほしい」という話にしたのも良しとしない。
山川編集委員は以下のように説明している。
【日経ビジネスの記事】
第四に、タクシーに乗ることを禁じているわけではない。
今回の措置は、あくまでも審査を厳格化するだけで、管理がしっかりしている韓国企業には、今後も輸出される。現に半導体関連3品目のうち、レジストやフッ化水素については、サムスン電子向けなどの輸出が許可された。
◎例えも「事前許可」にした方が…
「レジストやフッ化水素については、サムスン電子向けなどの輸出が許可された」と山川編集委員も書いているように、今回の「厳格化」とは個別契約ごとの事前許可を求めるものだ。
だとすれば「タクシー券」の話も「事前許可に基づいた1枚ずつの支給」にした方がいい。「タクシーに乗る際には、その都度、領収書をもらって精算」だと、タクシー使用に事前の許可は必要ないので、輸出の「厳格化」と整合しない。
ついでに記事の結論についても注文を付けたい。
【日経ビジネスの記事】
韓国が真っ先にすべきことは、日本に対する報復ではない。自らの足元を見直し、輸出管理を徹底することだ。タクシー券は無くても、必要に応じてタクシーには乗れる。まずは、そのことに本人が気づくべきである。
◎「本人」は気付いているのでは?
「タクシー券は無くても、必要に応じてタクシーには乗れる。まずは、そのことに本人が気づくべきである」と山川編集委員は記事を締めている。前提として「本人=韓国」は「必要に応じてタクシーには乗れる(管理がしっかりしている韓国企業には、今後も輸出される)」ことに気付いていないはずだ。
しかし、ちょっと考えにくい。時事通信は8月30日付の記事で以下のように報じている。
「韓国の産業通商資源省関係者は30日、日本政府が輸出管理を厳格化した韓国向け半導体材料3品目のうち、半導体製造に用いるフッ化水素の輸出を許可したと明らかにした。3品目中、輸出許可が確認されたのは半導体基板に塗るレジスト(感光材)に続き2例目」
「レジストやフッ化水素については、サムスン電子向けなどの輸出が許可された」ことを韓国政府は知らないと山川編集委員は信じているのだろうか。だとしたら、この件に関して記事を任せるのは避けた方がいい。
※今回取り上げた記事「ニュースを突く~『ホワイト国』を会社のタクシー券に例えると」
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00108/00040/
※記事の評価はD(問題あり)。山川龍雄編集委員への評価もDを維持する。山川編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経ビジネス「資産運用」は山川龍雄編集委員で大丈夫?
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/04/blog-post_20.html
尖閣問題の解説も苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_16.htmlhttp://kagehidehiko.blogspot.com/2016/04/blog-post_20.html
尖閣問題の解説も苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員
「早めに新興国押さえたFIFA」が苦しい日経ビジネス山川龍雄編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/fifa.html
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