2019年9月12日木曜日

日経「横河電機、医薬・食品向け機器事業を黒字化」は要らないベタ記事

原則として新聞にベタ記事は必要ない。多くの場合、きちんと情報を伝えるには行数が足りないからだ。12日の日本経済新聞 朝刊投資情報面に載った「横河電機、医薬・食品向け機器事業を黒字化~来期計画」という記事のような中身ならば、紙面に載せる意味が感じられない。
グラバー園(長崎市)※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

横河電機は2021年3月期をめどに医薬品・食品メーカー向けの制御・計測機器など「ライフイノベーション事業」を黒字化する計画だ。これまでの製造ラインだけでなく研究開発用に販路を広げる。同社はプラント制御機器が収益の柱。医薬品の開発などに詳しい人材を採用して費用が先行しているが、景気に左右されにくい事業を伸ばし安定収益源に育てる。

同事業の売上高は2年後までに約300億円(前期比8割増)を目指す



◎具体的な数字は?

『ライフイノベーション事業』を黒字化する計画だ」というのが記事の柱だが、損益に関する具体的な数字は全く出てこない。今回の記事であれば、これまでどの程度の赤字だったのか、「2021年3月期」にどの程度の黒字を目指すのかは必須だ。

製造ラインだけでなく研究開発用に販路を広げる」という話に関しても、どの程度の拡大を見込むかは入れたい。さらに言えば「黒字化」後に「横河電機」の利益の中で「ライフイノベーション事業」の寄与度がどうなるかも知りたいところだ。

しかし記事から得られるのは漠然とした情報ばかり。「同事業の売上高は2年後までに約300億円(前期比8割増)を目指す」という唯一の具体的な金額もなぜか「売上高」だ。「黒字化」の話ならば、損益の数字を優先して入れてほしい。

同事業の売上高は2年後までに約300億円(前期比8割増)を目指す」という説明にも問題がある。まず「売上高」と書けば年間の「売上高」を指すとは限らない。「前期比8割増」という情報から年間の「売上高」だと推測はできるが、明示すべきだ。

2年後」という表現も誤解を招く。「今期」は「2020年3月期」だ。これを起点に「2年後」を決めると「2022年3月期」になる。しかし、記事の趣旨からすると「2年後」は「2021年3月期」を指す可能性が高い。例えば「来期に約300億円(前期比8割増)を目指す」とすれば問題は解決する。

いずれにしても、このベタ記事は投資情報としてほぼ役立たずだし、紙面に載せる最低限のレベルにも達していない。「限られた行数ではこれが限界」と言うならば、やはりベタ記事はなくていい。


※今回取り上げた記事「横河電機、医薬・食品向け機器事業を黒字化~来期計画
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190912&ng=DGKKZO49625930Q9A910C1DTA000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

0 件のコメント:

コメントを投稿