松島観光遊覧船の乗船券発売所(宮城県松島町) ※写真と本文は無関係です |
「人生100年時代」に関して記事では以下のように書いている。
【日経の記事】
世界に先駆けて超高齢化社会に突入した日本は「人生100年時代」を迎えた。東京五輪が前回開かれた半世紀前の人生70年時代と異なり、60歳からの人生はとても長い。預金に金利がつかない時代にもなり、足りないお金は運用で稼ごうと高齢者がリスクと向き合い始めた。隣の投資家(インベスター)第2部では積極的に投資に挑む個人投資家の姿を追う。
中略)教科書通りにいえば、若年層よりもリスクを減らすべきである高齢者マネーを投資へと駆り立てているのが、「人生100年時代」の到来だ。18年の日本人の平均寿命は男性約81歳、女性約87歳と過去最高を更新した。これはあくまで平均でもっと長生きする人も多い。三菱UFJ信託銀行の調査によると、退職後からまったく資産運用せずに90歳まで長生きした場合、介護が必要になると6割を超える世帯でお金が枯渇するという。
◎基準を変えて「人生100年時代」と言われても…
「東京五輪が前回開かれた半世紀前の人生70年時代」から「人生100年時代」に移行したと筆者はみているのだろう。「東京五輪が前回開かれた半世紀前」の平均寿命はほぼ70歳なので「人生70年時代」に異論はない。
しかし「18年の日本人の平均寿命は男性約81歳、女性約87歳」に過ぎない。なのに「日本は『人生100年時代』を迎えた」のか。「これはあくまで平均でもっと長生きする人も多い」のは確かだ。しかし、それを言うならば「半世紀前」もそうだ。そんな適当な基準でいいのならば「半世紀前」を「人生90年時代」と捉えてもいい。
まともに論じるならば、最低でも基準は揃えるべきだ。「半世紀前」に関して平均寿命の水準に合わせて「人生70年時代」としたのならば、現状は「人生80年時代」か、長めに見ても「人生85年時代」だろう。
「人生100年時代」という言葉を使いたくなる気持ちも分かるが、記事の説得力がなくなるリスクは十分に意識してほしい。
ついでに言うと「人生100年時代」を強調しているのに「三菱UFJ信託銀行の調査」が「90歳まで長生きした場合」に関するものなのも引っかかる。「三菱UFJ信託銀行」も「人生100年時代」が到来したとは判断していないのだろう。
「キーナンバー『1643兆円』 2035年、60歳以上が持つお金」という関連記事にも注文を付けておきたい。
【日経の記事】
ここで問題になるのが、保有者の認知機能だ。認知症患者は30年に人口の7%に当たる830万人まで増えるとの推計がある。35年には最大で65歳以上の3人に1人が対象となり、有価証券の15%を認知症患者が持つ可能性がある。この巨額資産の何割かが塩漬けになるだけでも、日本経済には重荷となりそうだ。
◎「重荷になりそう」?
「有価証券の15%を認知症患者が持つ可能性がある。この巨額資産の何割かが塩漬けになるだけでも、日本経済には重荷となりそうだ」との解説が解せない。
仮に「認知症患者」が個人向け国債を保有しているとしよう。そして「塩漬け」状態になる。しかし満期まで保有するのは一般的だし、悪いことでもない。保有によって国の資金繰りを支えているとも言える。「日本経済には重荷」となりそうな感じはない。
では「認知症患者」が株式を保有している場合はどうか。例えばトヨタ株を保有しているとして、「塩漬け」状態になるとトヨタの経営に悪影響が出るのか。長期保有の株主の存在はトヨタにとって、そんなに「重荷」なのか。
長期で持たずに次々と売買しないと「日本経済には重荷」なのか。証券会社にとっては長期保有の投資家が増えるのは困るかもしれないが、そこを除けば「日本経済には重荷となりそうだ」と心配する必要はないだろう。
※今回取り上げた記事
「隣のインベスター第2部 アクティブ投資家の実像(1)足りないお金、運用で備え~人生100年時代の老後設計 リスクに向き合う高齢者」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190827&ng=DGKKZO48843410S9A820C1DTA000
「キーナンバー『1643兆円』 2035年、60歳以上が持つお金」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190827&ng=DGKKZO48895150S9A820C1DTA000
※記事の評価はいずれもD(問題あり)。
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