2019年5月2日木曜日

「早稲田のチベット」が引っかかる東洋経済「早稲田 vs. 慶応」

週刊東洋経済5月11日号の特集「最強私学はどっちだ? 早稲田 vs. 慶応」の中の「早稲田大学編 多様性はいまも息づく~学生と教員の国際化が進む 新学部の躍進で学内序列変動」という記事に気になる記述があった。
大分県別府市の風景 ※写真と本文は無関係です

【東洋経済の記事】

一方で、おとなしめの印象があるのが教育学部だ。同学部が入る16号館は早稲田キャンパスの一番奥に位置しており、「早稲田のチベット」とも呼ばれる。早稲田キャンパスに属する学部で偏差値が最も低いこともあり、文学部などの滑り止めとして入学してくる学生もいる。



◎「チベット」を使わない方が…

上記の説明には3つの問題を感じた。

まず悪い意味で「チベット」を使っている点だ。「奥に位置」する代表的な地名として用いている。実際に「教育学部」は学生の間で「早稲田のチベット」と呼ばれているのかもしれない。しかし、記事でその呼び方を紹介してよいかは別問題だ。

チベット」出身者がこうした表現に触れたらどう感じるか。筆者の常盤有未記者はその辺りを真摯に検討したのだろうか。「」かどうかは相対的な問題でもある。北京や上海から見ると「チベット」は「」かもしれないが、ユーラシア大陸という規模で見れば「チベット」の方が中心に近いとも言える。

東洋経済の読者に「チベット」出身者はわずかしかいないとは思うが、記事の書き手としては配慮を忘れないでほしい。

早稲田キャンパス」限定で「早稲田のチベット」と呼ぶ意味があるのかという問題も感じた。教育学部が「早稲田のチベット」ならば、「早稲田キャンパス」に隣接する戸山キャンパスにある文学部や文化構想学部はどうなるのか。理工系の学部がある西早稲田キャンパスはさらに離れているし、所沢キャンパスはもっと遠い。この辺りは「早稲田のチベット」の外ということか。

おとなしめの印象があるのが教育学部だ」と書いているのに、その理由を記していないも引っかかった。「早稲田のチベット」に位置して「早稲田キャンパスに属する学部で偏差値が最も低い」としても「おとなしめ」を裏付けてはいない。

この記事には、もう1つ気になった記述がある。

【東洋経済の記事】

早稲田が「学生一流、施設二流、教授三流」と自虐ネタで言われたのも昔」。現在は「学生も施設も教授もすべて一流」を目指している。



◎現状はどうなってる?

『学生一流、施設二流、教授三流』と自虐ネタで言われたのも昔」だとすると、今は事情が違うのだろう。だが、どうなっているのかは不明だ。目指すところは「学生も施設も教授もすべて一流」だとすると、まだ実現していないはずだ。

例えば「今は『学生二流、施設一流、教授三流』と称されることが多い」などと入れてほしかった。


※今回取り上げた記事
早稲田大学編 多様性はいまも息づく~学生と教員の国際化が進む 新学部の躍進で学内序列変動


※記事の評価はC(平均的)。常盤有未記者への評価はD(問題あり)からCへ引き上げる。

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