名護屋城跡(佐賀県唐津市)※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
アサヒグループホールディングス(GHD)は、業績不振が続けば社長兼最高経営責任者(CEO)を解任する基準を設けた。自己資本利益率(ROE)などが経営目標から一定期間下回ると、指名委員会で審議し取締役会での検証を経て解任する。
トップに権限を集中させ経営のスピード感を持たせながら透明性を高める狙いだ。日本企業で業績に連動させた解任基準を持つのは珍しい。
金融庁と東京証券取引所が2018年6月に企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード=総合2面きょうのことば)を改訂し、CEOが役割を果たしていない場合には、客観的に解任できる手続きを確立すべきだとの文言が加わった。アサヒGHDは海外のM&A(合併・買収)で事業がグローバル化しており、株主への経営責任をわかりやすく示す。
アサヒGHDは19年12月期から3カ年の中期経営計画で、ROEで13%以上を維持することを主要指標の一つに掲げている。18年12月期のROEは13.2%だった。
同社は3月から泉谷直木会長の代表権が外れ、代表権を持つのは小路明善社長兼CEOの1人となり、早く意思決定できるようになった。新体制にあわせ、ROEや投下資本利益率(ROIC)、売上高など定量的な解任基準を取締役会で定めた。指名委員会が決算期ごとに解任基準に該当するかを審議する。基準に該当する場合は取締役会で検証し、社長兼CEOの役職を解任する。
◇ ◇ ◇
疑問点を列挙してみる。
(1)「一定期間」とは?
「自己資本利益率(ROE)などが経営目標から一定期間下回ると、指名委員会で審議し取締役会での検証を経て解任する」と書いているが、「一定期間」がどの程度の「期間」なのか不明だ。これは記事に入れたい。
「アサヒグループホールディングス」が明らかにしていないのならば、そう明示してほしい。非公表の場合、それで「株主への経営責任をわかりやすく示す」ことができるのかとの疑問が浮かぶ。
「一定期間」を仮に3年としよう。その場合、最初の2年は「解任」にはならないはずだ。しかし記事では「指名委員会が決算期ごとに解任基準に該当するかを審議する」と説明している。これも解せない。「一定期間」とは1年なのか。だったら、そう書くべきだ。
(2)「定量的な解任基準」は非公表?
「ROEや投下資本利益率(ROIC)、売上高など定量的な解任基準を取締役会で定めた」と書いているが、これだけでは「解任基準」が漠然としている。見出しで「アサヒ、社長解任に業績連動基準」と打ち出したのだから「解任基準」の内容は肝だ。
「アサヒグループホールディングス」が教えてくれないという話ならば、それで「株主への経営責任をわかりやすく示す」ことができるのかとの疑問がここでも浮かぶ。
(3)何のための「審議」?
「定量的な解任基準」を定めたのに「指名委員会が決算期ごとに解任基準に該当するかを審議する」のもよく分からない。「定量的」であれば「解任基準に該当するか」どうかは決算発表と同時に決まる。「指名委員会」が「審議する」までもない。
例えば「ROEで13%以上を維持」できたかどうかを判断するのに「指名委員会」の「審議」が要るだろうか。他の経営指標を組み合わせるにしても「定量的な解任基準」であれば「審議」は要らない気がする。
(4)ROEを入れるのは…
記事の問題点ではないが、「解任基準」にROEを採用するのはどうかとは思った。「社長兼CEO」の判断で動かせる数字は「解任基準」に用いない方が好ましいだろう。
ROEは自己資本を少なくしたり、借り入れを増やしたりすると数値が良くなりやすい。「このままだとROEが低くなって解任されそうだ。それは避けたいから思い切った自社株買いをやるか」と考える「社長兼CEO」が出てきてもおかしくない。それは「アサヒグループホールディングス」にとって憂慮すべき事態ではないか。
※今回取り上げた記事「アサヒ、社長解任に業績連動基準~ROEなど 透明性高める」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190428&ng=DGKKZO44325750X20C19A4MM8000
※記事の評価はC(平均的)。
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