2019年4月4日木曜日

記事内容に「納得感」欠く日経「働き方進化論(2)」

4日の日本経済新聞朝刊1面に載った「働き方進化論~原石を逃すな(2)『スパルタ』にも納得感」という記事は、その内容に「納得感」がなかった。特に「串カツ田中」の事例が苦しい。記事では以下のように書いている。
久留米成田山の桜(福岡県久留米市)
        ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

串カツ田中ホールディングスの「小伝馬町研修センター店」(東京・中央)。3月中旬の昼すぎ、従業員が仕込み作業に追われていた。この日勤務していた10人の大半は新入社員。指導役は付くが原則として新人で店を切り盛りする。

「先輩のチェックで不合格になることが減ってきた」。2月に入社した柴田洸樹(30)はやっと仕事に慣れてきたように感じている。約30種類ある串揚げは最適な揚げ加減がそれぞれ違う。調理のほか、接客や売り上げ管理など業務は幅広く、戸惑った。だがスタートが同じ同期なら、競争心を持ちつつ助け合いながら成長できるという。

センター店での勤務は1~2カ月。2017年度までは新入社員は3日間の座学研修だけで、店舗への配属後も十分なスキルが身につかず、離職者が少なくなかった。「『仕事はやりながら覚えろ』では通用しづらくなっている」(串カツ田中取締役の織田辰矢=32)。自分たちだけで切り盛りし、失敗すれば厳しく指導される。「スパルタ」式で訓練される新人だけの店だからこそ、自ら考えて動く力が養われる。

人材サービス、エン・ジャパンの研修コンサルタント、横田昌稔(44)は「今の若者は行動の理由や目的を明示しなければ動かない」と指摘する。理不尽なことでも昇進と引き換えに我慢してきた年長者と違い、自分の成長に役立つという納得感をほしがる。


◎「スパルタ」式ならば…

『スパルタ』式」とは言うものの、その内容については「失敗すれば厳しく指導される」と書いてあるだけだ。これだと「確かにスパルタ式だな」とは思えない。見出しでも「『スパルタ』にも納得感」と打ち出したのだから、ここは「納得感」のある材料を提示してほしかった。

串カツ田中取締役」の「『仕事はやりながら覚えろ』では通用しづらくなっている」というコメントも引っかかる。流れとしては、「小伝馬町研修センター店」で働く「新入社員」は「仕事はやりながら覚えろ」スタイルではないと取れる。しかし「自分たちだけで切り盛り」しているのならば「仕事はやりながら覚え」ているのではないか。

エン・ジャパンの研修コンサルタント」の「今の若者は行動の理由や目的を明示しなければ動かない」というコメントも記事の中で浮いている。「串カツ田中」の事例が「今の若者」に「行動の理由や目的を明示」しているのならば、このコメントは効いてくる。しかし「小伝馬町研修センター店」で「行動の理由や目的を明示」している場面は出てこない。

さらに言えば「行動の理由や目的を明示」すれば「納得感」が得られるのならば、それは「3日間の座学研修」でもできるはずだ。「小伝馬町研修センター店」での「『スパルタ』式」の教育が有効だと見なす根拠にはならない。

今の若者は行動の理由や目的を明示しなければ動かない」との決め付けはコメントなのでまだ許すとしても「理不尽なことでも昇進と引き換えに我慢してきた年長者」との断定は感心しない。自分は「年長者」に入ると思うが、職場において「理不尽なことでも昇進と引き換えに我慢」した経験は一度もない。少数派かもしれないが、記事では「年長者」を一括りにし過ぎだ。しかも、どの年代より上を指しているかも不明だ。

記事の続きにも問題を感じた。

【日経の記事】

18年版の労働経済白書によると、日本の職場内訓練(OJT)の実施率は男性が50.7%、女性は45.5%だった。昔と違い、働きながらスキルを身につける機会は減った。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(男性55.1%、女性57.0%)を下回る。

OJTの実施率は生産性と正の相関関係があるとされる。若手の合意も得ながら現場で鍛える手法を企業は探らなくては、競争力も落ちる



◎因果関係はある?

OJTの実施率は生産性と正の相関関係がある」としても、因果関係があるとは限らない。なのに「若手の合意も得ながら現場で鍛える手法を企業は探らなくては、競争力も落ちる」と断定してよいのか。

昔と違い、働きながらスキルを身につける機会は減った」と言い切っているのも引っかかる。何の根拠も示していないし、「」がいつを指すのかも分からない。ほとんどの仕事は「働きながらスキルを身につける」ものだと思えるが、その「機会は減った」らしい。本当なのか。

やはり、この記事では「納得感」が得られない。


※今回取り上げた記事「働き方進化論~原石を逃すな(2)『スパルタ』にも納得感
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190404&ng=DGKKZO43304400T00C19A4MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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