2019年3月3日日曜日

「廃虚モール 米郊外で急増」? 日経 平野麻理子記者の騙し

日本経済新聞の平野麻理子記者には騙された。3日の朝刊総合1面に載った「『廃虚モール』米郊外で急増 税収減、自治体に打撃 ネット勢に敗れ4分の1消滅へ」という記事を見出しに釣られて読んでみたが「『廃虚モール』米郊外で急増」を裏付ける根拠は見当たらない。
西洋料理発祥の碑(長崎市のグラバー園)
        ※写真と本文は無関係です

記事の前半は以下のようになっている。

【日経の記事】

米国の郊外で廃虚同然の「デッドモール」が増えている。経営破綻した米小売りトイザラスやシアーズなどの大量閉店が響き、米国では2022年までに4分の1のショッピングモールが消滅するといわれる。小売店の減少は地元自治体の税収減につながり、公共サービスの水準低下などの問題も引き起こす。多くの州が税率の引き上げに加え、ネット通販事業者への課税に動き始めた。

南部バージニア州リッチモンド郊外のショッピングモール「バージニア・センター・コモンズ」。週末の昼間でも人の数はわずかだ。憩いの場だった噴水の水は抜かれたまま。最盛期の00年前後には100あったテナントは、いまや3分の1程度。営業店舗は中心部に固められ、モールの半分はシャッター街だ。

50代の女性客は「過去5年間でこのモールは完全に死んでしまった」と話す。16年には基幹テナントだった百貨店のメーシーズが閉店。残っていたシアーズも親会社が18年に経営破綻し、今年2月に閉鎖した。閑散としたモールでは治安悪化も深刻で、昨年10月には銃を持った男性による強盗事件まで発生した。

今回このモールのオーナーに接触を試みたが、反応を得られなかった。オーナー会社は税金の未払いで地元自治体から訴えを起こされるなど、モールは事実上見捨てられているといえる。

現在米国には約11万6000のショッピングモールがある。クレディ・スイスの推計では、米国のモールの最大4分の1が22年までに消滅する。米国のモールの空室率は18年10~12月期に9%となり、7年ぶりの高水準にある。

調査会社コアサイト・リサーチによると、18年に全米で5524の店舗の閉鎖が決まった。19年に入っても閉鎖の発表が続く。2月13日時点で今年中の閉鎖が発表された店舗数は前年同期比で23%も増えた。28日には百貨店大手のJCペニーが今年18店舗を閉じると明らかにした。



◎本当に「増えている」?

米国の郊外で廃虚同然の『デッドモール』が増えている」と平野記者は言い切る。その後に「米国では2022年までに4分の1のショッピングモールが消滅するといわれる」「米国のモールの空室率は18年10~12月期に9%となり、7年ぶりの高水準にある」などと数字を出してくるが、「デッドモール」がどの程度あって、いつと比べてどのくらい増えているのかは不明だ。これでは記事として成立していない。

本来ならば、まず「デッドモール」の定義が欲しい。例えば「空室率50%以上のショッピングモール」として、その数が「米国の郊外」でどう変化しているかを見せるべきだ。「そんなデータはない」と言うならば、何を根拠に「米国の郊外で廃虚同然の『デッドモール』が増えている」と書いたのかと聞きたくなる。

バージニア・センター・コモンズ」は「デッドモール」かもしれないが、同じような「モール」が増えているかどうか記事からは判断できない。「米国のモールの空室率は18年10~12月期に9%となり、7年ぶりの高水準にある」と書いているので「米国のモールの空室率」は7年前も今も似たようなレベルなのだろう。であれば「デッドモール」の数が7年前と同水準でも不思議ではない。

記事の続きを読むと「米国の郊外で廃虚同然の『デッドモール』が増えている」との説明をさらに疑いたくなる。

【日経の記事】

モールの空洞化は他業態にとっては好立地の物件が安く出回るチャンスでもある。シアーズの跡地にはジムや映画館、食品スーパーが積極的に出店している。

「北米の出店候補地の7割がシアーズ物件だ」と話すのは、日本のラウンドワンの杉野公彦社長だ。米国の閉店ラッシュが商機とみて投資を加速させている。18年度にオープンした11店舗のうち半数が小売店舗の跡地だった。19年以降も米国で年10店以上の出店を目標に掲げる。



◎だったら、なおさら…

モールの空洞化は他業態にとっては好立地の物件が安く出回るチャンスでもある。シアーズの跡地にはジムや映画館、食品スーパーが積極的に出店している」のであれば「デッドモール」は増えにくそうだ。

もちろん、実際には「『廃虚モール』米郊外で急増」で正しいのかもしれない。しかし、今回の記事はあまりに材料不足だ。なのに「モールの空洞化は州政府や地元自治体にも打撃を与えている」とか「そんな中、米最高裁は18年6月、州政府がネット通販事業者から売上税を徴収することを認める判決を出した」といった周辺情報に多くの行数を割いている。そこに触れるなとは言わないが、肝心な情報を読者に提示するのが先だ。

最後に見出しにも注文を付けておきたい。平野記者は「米国の郊外で廃虚同然の『デッドモール』が増えている」としか書いていない。記事を最後まで読んでも「急増」と判断できる記述は見当たらない。「『廃虚モール』米郊外で急増」という見出しは踏み込み過ぎだ。


※今回取り上げた記事「『廃虚モール』米郊外で急増 税収減、自治体に打撃 ネット勢に敗れ4分の1消滅へ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190303&ng=DGKKZO41925270R00C19A3EA1000


※記事の評価はD(問題あり)。平野麻理子記者への評価はC(平均的)からDへ引き下げる。平野記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

スタバの対応どこが「黒人差別」? 日経 平野麻理子記者に注文
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post_66.html

「アイコス販売鈍化」を工夫なく続けて記事にする日経
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_22.html

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