長崎港(長崎市)※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 根本舞様 佐藤雅哉様
6日の朝刊未来学面に載った「ポスト平成の未来学 最終部 0歳の君へ~姿形を超えた仲間 AI 過信せず付き合う」という記事についてお尋ねします。「ルール作り 遅れる日本」という関連記事では「(AIの)活用の幅も広まっていく。IT(情報技術)システムへの搭載だけでなく、将来はスマートフォンやIoT機器でも利用できるようになり、多様なサービスが生まれそうだ」と説明しています。
これを信じれば、現時点では「スマートフォン」でAIを「利用でき」ないはずです。しかし、既にAIを「利用できる」のではありませんか。例えば「Siri」です。6月5日付の「アップル、『Siri』使いやすく 管理アプリを発表」という日経の記事では「人工知能(AI)を用いた音声アシスタント『Siri(シリ)』」について「シリは同名のスタートアップ企業が手掛けていたサービスを2010年にアップルが買収し、iPhoneやMacなどに搭載先を広げてきた」と記しています。これが大筋で正しければ、現時点でも「スマートフォン」でAIを「利用でき」ます。
未来学面の記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
せっかくの機会なので、記事に関する感想も述べておきます。まずは引っかかった点を列挙していきます。
(1)「ビジネス価値」について
「米ガートナーはAIがもたらすビジネス価値が18年に1兆1750億ドル(約130兆円)、22年には約3兆9000億ドルになると予測する」というくだりの「ビジネス価値」が気になりました。そこそこ経済記事を読んでいるつもりですが、初耳の言葉です。この用語を使うならば定義の説明が欲しいところです。
(2)グラフとの整合性について
「人工知能(AI)の市場は急拡大が見込まれている。米調査会社IDCは2022年のAIシステムの市場規模が利用企業の支出額で2947億円以上になり、年平均成長率は60.7%になると予測する」と書いていますが、記事に付けたグラフでは「米ガートナー」の「ビジネス価値」を使い、「成長率」は70%前後から右肩下がりです。グラフには「IDC」のデータを用いた方が良かったのではないかと感じました。
(3)見出しと本文について
「ルール作り 遅れる日本」と見出しで打ち出しているのに、これに関しては「みずほ情報総研の豊田健志氏は、欧米と比較して『日本はAIのルール整備で出遅れている』といい、経済協力開発機構(OECD)諸国と連携し、ルール作りで役割を果たす重要性を指摘する」と述べているだけです。これはお薦めしません。見出しに釣られて読んだ人は失望するでしょう。
「ルール整備」のどういう部分でどの程度の遅れなのかは欲しい気がします。整理部と相談して見出しを変える手もあります。
色々と指摘してきましたが、メインの記事も含めて全体の完成度はそこそこ高いと感じました。根本様と佐藤様の問題意識も記事から伝わってきました。
お忙しいところ恐縮ですが、「スマートフォン」に関する質問には回答をお願いします。根本様が「35歳」で佐藤様が「30歳」であれば、まだ知らないかもしれませんが、日経では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。長く続く悪しき「レガシー」です。
「最終部の4話はポスト平成を生きる、いま0歳の君にメッセージを残したい」--。記事の冒頭でそう書いていましたね。「いま0歳の君」が日経に入社する頃には、悪しき「レガシー」一掃しておきたいとは思いませんか。正しい選択をしようとしても「黙って日経の伝統に従え」と求められるかもしれません。それでも根本様と佐藤様には「時に強い意志を持って反論する勇気を持ち続けてほしい」。そう願っています。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「ルール作り 遅れる日本」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181206&ng=DGKKZO38569950V01C18A2TCP000
※記事の評価はC(平均的)。根本舞記者と佐藤雅哉記者への評価も暫定でCとする。
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