2018年11月26日月曜日

「日本では病院のデータ提供不可」と誤解した日経 太田泰彦編集委員

日本経済新聞の太田泰彦編集委員に問題が多いことは、これまでも繰り返し指摘してきた。26日の朝刊企業面に載った「経営の視点~中華イノベーションの源泉 『緩さ』が拓く 新・製造業」という記事でも、その傾向に変化はない。事実誤認と思える記述も見られたので、日経には以下の内容で問い合わせを送った。
いでゆ坂(大分県別府市)※写真と本文は無関係

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 太田泰彦様

26日の朝刊企業面に載った「経営の視点~中華イノベーションの源泉 『緩さ』が拓く 新・製造業」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

<記事の当該部分>

AI開発の碼隆科技(マロン・テクノロジー)社は、博士号を持つ研究者が集まり14年に設立した。たとえば磁気共鳴画像装置(MRI)による脳疾患の診断システムが、深圳の病院で既に使われ始めている。

5~6人の医師が読影した診断結果と、AIが特定した腫瘍部位の画像は、ほぼ完全に一致。違うのは判定までにかかった時間だ。電気代だけで働くAIは1.725秒、高給の人間チームは6分だった。医療コストは劇的に下がった。

なぜ開発スピードがこれほど速いのか。同社の国際ビジネス担当に尋ねると、苦笑と答えが返ってきた。「だって、日本や米国では病院から患者のデータなどもらえないでしょう?」

--ここからが質問です。

記事からは「日本や米国では病院から患者のデータなどもらえない」と判断できます。本当にそうでしょうか。日経電子版に出ている「AIで冠動脈診断へ 小倉記念病院とGEヘルスケア」という記事(日経クロステック9月21日付)によると「同病院に蓄積された過去4年間、約2万件の心臓CT検査画像と冠動脈画像から、心臓の特徴を学習させることにより、冠動脈自動診断を実現していく」ようです。記事の説明が正しければ「GEヘルスケア・ジャパン」は「病院から患者のデータ」をもらえるはずです。

日本や米国では病院から患者のデータなどもらえない」と取れる説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。問題の部分は「碼隆科技」の「国際ビジネス担当」のコメントではありますが、太田様は「日本や米国では病院から患者のデータなどもらえないでしょう?」との問いかけに同意して記事を書いているはずです。

付け加えると「なぜ開発スピードがこれほど速いのか」との説明は腑に落ちませんでした。「碼隆科技」の設立は「14年」なので、現時点で4年が経過しています。開発した「診断システム」を商品化できているとしても、驚くほどのスピードとは思えません。

「4年でも驚異的な速度だ」との判断であれば、例えば「業界の常識では開発に最短でも10年を要する」といった情報を記事に入れるべきです。

せっかくの機会なので、記事の冒頭の説明にも疑問を呈しておきます。

<記事の冒頭部分>

目覚めた直後の寝ぼけ眼で、歯ブラシがうまく握れないことがある。指先の動きはぎこちないけれど、視覚と脳の働きが必死にそれを補い、やがて動作が追いついてくる。

同じ理屈が機械にも当てはまる。部品の精度をミクロン単位まで極めなくても賢い人工知能(AI)があれば、ロボットや工作機械を正確に制御できる。

--ここからが疑問点です。

上記の記述からは「人間の体は精度をミクロン単位まで極めなくても、脳(知能)が補ってうまく動いてくれる」との前提を感じます。しかし、そうは思えません。ここでは「視覚」について考えてみましょう。

生理学研究所の研究報告によると「網膜の中の神経細胞」は「神経の種類ごとに規則正しく網目上に連なり、数十~数百ミクロンの網目を作っている」だけでなく「細胞よりもさらに細かい単位で、神経と神経のつなぎ目であるシナプスも網膜内に網目状に広がっており、細胞よりもさらに細かい3ミクロンの網を作っている」そうです。

精度をミクロン単位まで極め」た「神経細胞」が「網膜の中」にあるから、「視覚」が得られて「歯ブラシ」を認識できるのではありませんか。仮に「部品の精度をミクロン単位まで極めなくても賢い人工知能(AI)があれば、ロボットや工作機械を正確に制御できる」としても、それを人体と「同じ理屈」だと考えるのは無理があります。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


※今回取り上げた記事「経営の視点~中華イノベーションの源泉 『緩さ』が拓く 新・製造業
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181126&ng=DGKKZO38122840S8A121C1TJC000


※記事の評価はD(問題あり)。太田泰彦編集委員への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。太田編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

問題多い日経 太田泰彦編集委員の記事「けいざい解読~ASEAN、TPPに冷めた目」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/05/blog-post_21.html

日経 太田泰彦編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_94.html

説明不十分な 日経 太田泰彦編集委員のTPP解説記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_6.html

日経 太田泰彦編集委員の力不足が目立つ「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_18.html

日経 太田泰彦編集委員のTPP解説記事に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/11/blog-post_12.html

日経 太田泰彦編集委員の辻褄合わない「TPPルール」解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/tpp.html

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