2018年11月25日日曜日

「日産ゴーン会長逮捕」の記事に粗が目立つ週刊エコノミスト

週刊エコノミスト12月4日号の「日産ゴーン会長を逮捕 『世界2位』連合に瓦解の恐れ ブランド失墜で販売低迷も」という記事は問題が目立った。「逮捕」から締め切りまで時間がなかったのは分かるが、全体として説得力を欠く内容になっている。
龍門の滝(大分県九重町)※写真と本文は無関係です

筆者らには以下の内容で問い合わせを送った。

【エコノミストへの問い合わせ】

週刊エコノミスト編集部 岡田英様 大堀達也様  編集長 藤枝克治様

12月4日号の「日産ゴーン会長を逮捕 『世界2位』連合に瓦解の恐れ ブランド失墜で販売低迷も」という記事についてお尋ねします。質問は2つです。


(1)「小さくないはずはない」について

記事中の「ルノー・日産BVは両社の中長期の経営方針などを決定する事実上のグループの統括会社で、ゴーン氏の突然の退場は3社連合に及ぼす影響は小さくないはずはない」という記述で「小さくないはずはない」となっているのは誤りではありませんか。文脈上「小さいはずはない」「小さくない」などとしないと成立しません。誤りであれば、次号に訂正を掲載してください。

退場『は』3社連合に及ぼす影響は~」の部分については「退場『が』3社連合に及ぼす影響は」とした方が自然です。


(2)「50%以上に引き上げて完全子会社に」について

記事には「だが、遠藤功治・SBI証券企業調査部長は『ゴーン氏がいなくなれば、仏政府がルノーへの影響力を強め、ルノーから日産への出資比率を43%から50%以上に引き上げて完全子会社にする可能性もある』と指摘する」との記述があります。

完全子会社とは、ある株式会社において、その発行済株式総数のすべてを他の株式会社に所有されている場合である。有限会社、相互会社あるいは個人等に所有される場合は完全子会社とはいわない。また、所有する側の株式会社は必ず1社であると決められている」と会計用語キーワード辞典では説明しています。

だとすると「50%以上に引き上げて完全子会社にする」という説明は誤りではありませんか。「100%に引き上げて完全子会社にする」とすべきでしょう。「50%以上」には「100%」も含まれますが、その点を考慮しても「50%以上に引き上げて完全子会社にする」というコメントには問題があると思えます。

さらに言うと、「遠藤功治・SBI証券企業調査部長」の発言は、記事中の「次世代自動車産業の動向に詳しい立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は『3社連合はゴーン氏の求心力だけでつながっていた』と指摘」という説明と整合しません。

3社連合はゴーン氏の求心力だけでつながっていた」のであれば、ゴーン氏が去った後に「仏政府がルノーへの影響力を強め、ルノーから日産への出資比率を43%から50%以上に引き上げて完全子会社にする可能性」は基本的にないはずです。

常識的に判断すると「立教大学ビジネススクールの田中道昭教授」のコメントに無理があります。「ルノーから日産への出資比率」は「43%」に達しているのですから「ゴーン氏の求心力だけでつながっていた」とは言えません。

ついでに、もう1つ指摘しておきます。デジタル版でこの記事を見ると「日産は22日に開く臨時取締役会でゴーン会長を解任する予定で、日産の5字回復を牽引(けんいん)してきたトップの衝撃的な退場は、世界2位の販売台数を誇る巨大自動車グループの瓦解(がかい)につながる恐れもある」と出てきます(11月25日午前8時時点)。「5字回復」を「V字回復」に修正してください。
別府公園(大分県別府市)※写真と本文は無関係です

問い合わせは以上です。回答をお願いします。

御誌では間違い指摘を無視する対応が常態化しています。珍しく回答があったかと思えば「人格攻撃はやめていただけますか」と身に覚えのない非難が返ってきます。これに対して「人格攻撃をしたと主張するのであれば、その根拠を示してください」と求めると、今度は無視です。こうした対応は読者から購読料を得ているメディアとして適切と言えるでしょうか。

今回の記事では日産について「組織として機能していなかったと言わざるを得ない」という「遠藤氏」のコメントを使っています。今の御誌に日産が「組織として機能」しているかどうかを論じる資格があるでしょうか。その点を編集部全体でしっかり考えてください。答えは明らかなはずです。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「日産ゴーン会長を逮捕 『世界2位』連合に瓦解の恐れ ブランド失墜で販売低迷も
http://mainichi.jp/economistdb/index.html?recno=Z20181204se1000000051000


※記事の評価はD(問題あり)。岡田英記者への評価は暫定でDとする。大堀達也記者への評価はDを据え置く。大堀記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

英国EU離脱特集 経済4誌では週刊エコノミストに軍配
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/07/blog-post_7.html

力作だが力み過ぎも… 週刊エコノミスト特集「電通」に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/08/blog-post_17.html

週刊エコノミストの特集「家は中古が一番」に異議あり
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post.html

データ解釈に問題あり週刊エコノミスト特集「ブラック企業」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/12/blog-post_7.html

週刊エコノミスト金山隆一編集長への高評価が揺らぐ記事
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/01/blog-post_12.html

「無理のある回答」何とか捻り出した週刊エコノミストを評価
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/01/blog-post_94.html

ヨイショが過ぎる週刊エコノミスト「お金が増えるフィンテック」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_29.html

「おつり投資」に意味ある?週刊エコノミストのフィンテック特集
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/05/blog-post_31.html

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