切株山園地(大分県玖珠町)※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 渡辺淳様 大島有美子様
14日の朝刊金融経済面に載った「曲がり角のATM(上) 自前主義から協調へ 重いコスト負担 低減探る」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「銀行は取引先でもあるメーカーと二人三脚で利便性を高め、ATMの機能を拡張してきた。紙幣のシワをのばすアイロンまで内蔵された。高度化したATM1台を動かすのに必要な管理費は、月に約700万円ともいう。三菱UFJ銀は店舗外ATMの大半が赤字だとみられる」
「ATM1台を動かすのに必要な管理費は、月に約700万円」というのは本当でしょうか。2017年12月24日の日経の記事では「ある銀行関係者は『ATM1台の価格は300万円ほど。それに警備費や監視システムだけで1台に毎月約30万円の費用がかかる』と明かす」と記しています。
日経ビジネス11月12日号でも「標準的な機能を備えたATMを1台設置する場合、初期費用が約200万~300万円。運用開始後も機器のメンテナンスや現金輸送、警備といった維持費が1台当たり月30万~40万円かかるとされる」と書いており、この2つの記事の内容はほぼ一致します。「紙幣のシワをのばすアイロンまで内蔵された」機種は多少コストがかさむかもしれませんが、「管理費」が20倍になるでしょうか。
渡辺様と大島様は「(ATMを)相互に開放することで立地の重なる計500カ所ほどの拠点を減らせれば、数十億円の経費削減につながる」とも説明しています。「500カ所ほどの拠点」にそれぞれ1台しかATMがないと仮定しても「管理費」を年間で400億円以上も減らせる計算になります。「数十億円の経費削減」と「月に約700万円の維持費」は整合しません。
「ATM1台を動かすのに必要な管理費は、月に約700万円」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
ちなみに、毎日新聞は11月7日付の「三菱UFJと三井住友 ATM共通化 店舗外、来年前半に」という記事で「ATMでの引き出しは近年減少傾向の上、管理などの維持費用は1台で年間約700万~1000万円程度かかるとされる」と記しています。渡辺様と大島様は「年に約700万円」を「月に約700万円」と間違えたのだとすれば辻褄が合います。
付け加えると「三菱UFJ銀行と三井住友銀行が2019年前半にもATMの相互開放に乗り出す」ことを受けて「人口減や長引く低金利で経営環境が厳しさを増すなか、分野によっては競い合いをやめて手を握る新たな競争時代に突入した」と書くのは無理があると感じました。
「三菱UFJ銀行」に関して言えば、既にJAバンク、イオン銀行などとATMの相互利用に乗り出しており、平日の昼間であれば手数料なしで現金を引き出せます。提携先コンビニATM(セブン銀行ATM、ローソンATM、E-net ATM)でも条件付きで手数料なしの引き出しが可能です。
渡辺様と大島様は「自前主義にこだわり続けた銀行界が協調にかじを切ろうとしている」と解説していますが、「三菱UFJ銀行」のATMに限っても、「自前主義」へのこだわりはかなり前になくなっているはずです。
問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
追記)15日の朝刊に「14日付『曲がり角のATM(上)』の記事中で『月に約700万円』とあったのは『年に約700万円』の誤りでした」と出ていたが、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「曲がり角のATM(上) 自前主義から協調へ 重いコスト負担 低減探る」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181114&ng=DGKKZO37648610S8A111C1EE9000
※記事の評価はD(問題あり)。渡辺淳記者への評価はDを据え置く。大島有美子記者に関しては暫定でDとする。渡辺記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
肝心なことが抜けた日経「保険販売、手数料が高騰」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2016/09/blog-post_76.html
ぐるなび会長の寄付で「変わる相続」語れる? 日経「ポスト平成の未来学」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/blog-post.html
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