小石川後楽園(東京都文京区) ※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
21日の日本経済新聞朝刊1面に載った「ゴーン退場 20年目の危機(上) 日仏連合、主導権は誰に」という記事についてお尋ねします。気になったのは以下のくだりです。
「15年12月、仏政府は日産への経営に関与しないことで合意。これを主導したのがゴーン会長だった。『日産の経営判断に不当な干渉を受けた場合、ルノーへの出資を引き上げる権利を持つ』と確認した。仮に日産がルノー株を25%以上まで買い増せば、日本の会社法によりルノーが持つ日産株の議決権が消滅する。いわば日産にとって仏側に対抗する唯一の『伝家の宝刀』を得た。ゴーン会長にとってこの宝刀は、時に同氏に圧力をかける仏政府への抑止力ともなっていた」
記事の説明を信じれば「ルノー株」の買い増し以外に、日産には「仏側に対抗する」手段がないはずです。しかし、日産は増資によっても「仏側」に対抗できるのではありませんか。増資でルノーの出資比率を下げれば「仏側」の影響力は弱まります。
記事には「現在はルノーが日産に43.4%、日産が15%をルノーにそれぞれ出資する。両社は『対等の精神』をうたうものの、フランスの法律の制限で日産が持つルノー株には議決権がない」との説明もあります。
ロイターによると「フランスの法律上、ルノーの日産に対する持ち株比率を40%未満に引き下げれば、日産が議決権を持てる可能性はある」ようです。だとすれば「ルノーの日産に対する持ち株比率」を増資によって引き下げることは、二重の意味で対抗策になります。
増資で得る資金の使途を成長投資などとすれば、増資はできると思えます。ルノーとの契約で増資に縛りがあるのかとも考えました。しかし、調べた範囲ではそうした情報は得られませんでした。今回の記事でも触れていません。
ルノー株の買い増しが「日産にとって仏側に対抗する唯一の『伝家の宝刀』」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
付け加えると「伝家の宝刀」の使い方にも違和感があります。「伝家の宝刀」とは「家に代々伝わる大切な刀。転じて、いよいよという場合にのみ使用するもの」(デジタル大辞泉)という意味です。立派な「刀」を手に入れたとしても、その瞬間から「伝家の宝刀」にはならないでしょう。現時点で考えても、手に入れてまだ3年の「刀」を「伝家の宝刀」と呼ぶのは苦しい気がします。
問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
記事でもう1つ引っかかったのが以下のくだりだ。
【日経の記事】
そのゴーン会長が突然、権力を失ったことで、これまでの関係は揺らぎかねない。とはいえ14年に部品などの購買や研究・開発、生産など4つの機能を統合しており、日仏連合は逆戻りできない関係でもある。
◎「逆戻り」できるような…
連載を担当した田中暁人記者と伊藤正泰記者は「購買や研究・開発、生産など4つの機能を統合しており、日仏連合は逆戻りできない関係でもある」と見ているようだ。しかし「逆戻り」できるのではないか。「機能」を分離すれば済む話だ。経営統合したダイムラークライスラーでも統合を解消できたのに「購買や研究・開発、生産など4つの機能を統合」した程度で「逆戻りできない」と考えるのは理解に苦しむ。
記事には「いずれゴーン会長がトップの座をおりても協力関係が壊れないような枠組み作りが仏政府が出した再任の条件だったとされる」との記述もある。「逆戻りできない関係」であれば「ゴーン会長がトップの座をおりても協力関係が壊れないような枠組み」は既にできているはずだ。田中記者と伊藤記者は「仏政府」の認識に誤りがあるとでも考えているのか。
※今回取り上げた記事「ゴーン退場 20年目の危機(上) 日仏連合、主導権は誰に」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181121&ng=DGKKZO37991380Q8A121C1MM8000
※記事の評価はC(平均的)。連載の「下」については別の投稿で取り上げる。田中暁人記者と伊藤正泰記者への評価もそこで決めたい。
追記)「下」については以下の投稿を参照してほしい。
「独裁者」「暴君」と知っていたなら…日経「ゴーン退場 20年目の危機」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/20_23.html
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