2018年9月7日金曜日

麻生太郎財務相への思いが強すぎる日経 上杉素直氏

日本経済新聞の上杉素直氏(肩書は本社コメンテーター)は麻生太郎財務相への思いが強すぎるようだ。以前も麻生氏を持ち上げる記事を書いていた。そして7日の「Deep Insight~公務員を生かすために」という記事では、麻生氏の「閣僚給与」が少な過ぎると訴えている。
芥屋の大門(福岡県糸島市)※写真と本文は無関係です

まずは当該部分を見ていこう。

【日経の記事】

今春世間を騒がせた財務省の公文書改ざん問題を受けて、麻生太郎財務相は閣僚給与を1年分返納する処分を自らに課した。与党幹部からは「極めて重い対応だ」という評価の声が上がったが、返納した1年分の給与は170万円。起こした問題の大きさの割に処分が軽いのではないかと疑問を呈するメディアが相次いだ。

閣僚給与は麻生氏の年収ではなく、ルールで決められた大臣の報酬から国会議員としての給料を差し引いた数字。ふつうの議員が閣僚になったときに上乗せされる部分と考えればよい。公職選挙法で返納を許されるのは閣僚給与の一部までという事情で今回持ち出された。制度上の閣僚給与は700万円を超えるが、安倍内閣の閣僚は行政改革の観点から給与をすでに減らしており、麻生氏の閣僚給与は170万円だった。

麻生氏の処分が170万円の返納で十分かどうかは別にして、財務相としての手当があまりに低いと私は感じた。国の財政運営と通貨政策の責任者である財務相は大きな権限をもつと同時に高い専門性と見識を求められる。だからマスコミはその一挙手一投足をウオッチする。相場が荒れれば24時間マーケットと対峙し、国会審議の合間を縫って地球の裏側での国際会議に飛ぶ激務でもある。

心身の負担に報いるということ以上に考えなければならないのは、そのポストに対する社会の敬意や期待の象徴としての給与の意味合いだろう。公職の給与は限られた税金が元手であり、国の財政は極めて厳しい状況にある。それでもやはり、重要な仕事にはきちんと報酬を払うという発想がもう少しあってよいと思う。



◎で、いくら払うべき?

上杉氏の主張には大きく2つの問題がある。

まず「財務相としての手当があまりに低い」と訴えているのに、どの程度に引き上げるべきか述べていない。170万円を10億円に引き上げれば、大きな反発を招くだろう。200万円に増やすのならば反対は少ないかもしれないが、金額は今と大して変わらない。具体的な金額を打ち出さないと、主張としてはあまり意味がない。

また「閣僚給与」だけ切り出すのも感心しない。国会議員として得ている収入も含めた金額で多寡を論じるべきだ。「議員が閣僚になったときに上乗せされる部分」だけ持ち出して「公職の給与」を考えるのは不適切だ。

例えば、年俸5億円の野球選手がいて、年俸には100万円の主将手当も含まれているとしよう。その場合、「プロ野球選手の主将という重い責務を考慮すれば主将手当の100万円はあまりに少ない」と考えるべきだろうか。個人的には「成績にもよるが、総額で5億円出しているんだから球団は十分に報いている」と思える。

ついでに言うと「財務相」に関して「相場が荒れれば24時間マーケットと対峙」と説明している部分はおそらく違う。「相場が荒れ」るのは珍しくない。最近ではトルコリラの急落もあった。そのたびに「24時間マーケットと対峙」していたら体が持たないし、他の仕事ができない。

記事の説明が正しければ、「麻生太郎財務相」はこれまで何度も徹夜して「24時間マーケットと対峙」していたはずだ。常識的に考えて、そんなことはやっていないだろう。仮にやっているとしたら「あまり意味がないし、他の仕事に差し支えるからやめましょう」と進言したくなる。

この辺りは「麻生太郎財務相」に対する上杉素直氏の強すぎる思いが筆を滑らせたと見るべきだろう。



※今回取り上げた記事「Deep Insight~公務員を生かすために
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180907&ng=DGKKZO35072200W8A900C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。上杉素直氏への評価はDを維持する。上杉氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「麻生氏ヨイショ」が苦しい日経 上杉素直編集委員「風見鶏」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/blog-post_25.html

「医療の担い手不足」を強引に導く日経 上杉素直氏
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_22.html

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