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【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 政治部次長 佐藤賢様
5日の朝刊総合3面に載った「風見鶏~安倍首相がほしい部下」という記事についてお尋ねします。まずは以下のくだりについてです。
「名参謀という点では、今なら菅義偉官房長官がこのタイプかもしれない。霞が関ににらみを利かせ、首相を支える役割に徹する。首相が9月の自民党総裁選で圧勝し、来年夏の参院選を乗り切って宿願の憲法改正をなし遂げるためには、知将の役割が重要になる」
ここでは「菅義偉官房長官」のような「名参謀」を指して「知将の役割が重要になる」と説いています。記事の最後でも「首相がさらに長期政権を築くには、知将と諫言の士の2つのタイプの部下が必要になる」と佐藤様は書いています。
しかし「知将」とは「はかりごとや戦略・戦術にすぐれた大将」(デジタル大辞泉)のことです。トップを支える「参謀」などに用いるのは不適切です。プロ野球などでも「知将」と呼ばれるのは、ほとんどが監督です。
記事中の「知将」の使い方は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
次は以下のくだりに関する質問です。
「ライフネット生命の創業者でもある出口氏がほしい部下として推すのが中国・唐の魏徴(ぎちょう)だ。『上司の悪口を言い続けた人です。悪口を毎日言ってくれるので、上司が誤ることはない。魏徴がいたら、仕事は楽だろうなあ』。魏徴は唐の第2代皇帝、太宗(李世民)にズバズバと忠告した『諫言(かんげん)の士』として有名だ。太宗は「貞観の治」と呼ばれた太平の世を実現した」
「魏徴」が「諫言の士」だったのならば、「上司の悪口を言い続けた人」とは言えないのではありませんか。「諫言」とは「目上の人の過失などを指摘して忠告すること。また、その言葉」(デジタル大辞泉)を指します。
記事では「首相も読んだ太宗の言行録『貞観政要』には、トップは安泰になると気を緩めて聞く耳を持たなくなり国が滅びる、と魏徴が説く場面が出てくる」とも書いています。「トップは安泰になると気を緩めて聞く耳を持たなくなり国が滅びる」と「魏徴」が説いたのならば、その言葉はまさに「諫言」です。「上司の悪口」ではありません。
「魏徴」に関する「上司の悪口を言い続けた人です」という説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
「出口氏」のコメントでは「悪口を毎日言ってくれるので、上司が誤ることはない」という部分も引っかかりました。「悪口」ですから「バカ」「クズ」「間抜け」といった言葉を「毎日言って」もいい訳です。それで「上司が誤ることはない」となるでしょうか。記事中でコメントを使うならば、正確で説得力のあるものを選ぶべきです。
最後に「首相がさらに長期政権を築くには、知将と諫言の士の2つのタイプの部下が必要になる」という結びに関して注文を付けておきます(「知将」の誤用問題はここでは無視します)。
結びからは、今の首相には「知将と諫言の士の2つのタイプの部下」がいないとの前提を感じます。しかし「知将」については「名参謀という点では、今なら菅義偉官房長官がこのタイプかもしれない」と書いているので「菅義偉官房長官」が当てはまりそうです。
記事には「安倍首相もいろいろな人から意見を聞くよう努めており『イエスマンなんていない』と感じている。菅官房長官ら周りから率直な意見をぶつけられるらしい」との記述もあります。だとすれば「諫言の士」も多数いるはずです。
「リーダーがイエスマンばかり集めないように心がけても、時間がたつといつのまにか増えてしまうのは古今東西の世の常でもある」のはその通りでしょう。そこを差し引いても「首相がさらに長期政権を築くには、知将と諫言の士の2つのタイプの部下が必要になる」との結論は説得力に欠けます。
例えば「首相がさらに長期政権を築くには、知将と諫言の士の2つのタイプの部下をさらに増やす必要がある」となっていれば、問題は感じません。
問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では読者からの「諫言」を無視する対応が常態化しています。「諫言の士」の大切さを説いた佐藤様までが「諫言」を自ら遠ざけてしまわないよう祈念しています。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「風見鶏~安倍首相がほしい部下」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180805&ng=DGKKZO33755150T00C18A8EA3000
※記事の評価はD(問題あり)。佐藤賢政治部次長への評価は暫定でDとする。
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