2018年8月15日水曜日

「無事これ名馬」だが…日経 大塚節雄記者に注文

日本経済新聞の大塚節雄記者を取り上げたいとずっと思いながら、できずにいた。まず、大塚記者がニューヨーク発で書く市場関連記事はツッコミどころが少ない。ならば褒めるべき点はないかと考えてみるが、そこまでの出来でもない。そんな大塚記者をようやく取り上げることにしたのは、14日の夕刊マーケット・投資面に載った「ウォール街ラウンドアップ~トルコショック、米国株に死角」という記事にツッコミを入れてみたくなったからだ。

増水した筑後川と筑後川橋(福岡県久留米市)
          ※写真と本文は無関係です
 まずは以下のくだりから。

【日経の記事】

国際決済銀行(BIS)によると、今年3月末時点の各国銀行のトルコに対する与信はスペインの809億ドル(9兆円弱)を筆頭にフランスの351億ドル、イタリアの185億ドルが続く。だが、実は米国も181億ドルとイタリアのすぐ下の4番手につける。

さらにデリバティブなどにまつわる潜在的なリスク負担のうち「延長保証」は米国が136億ドルと最大の担い手。JPモルガンによると、こうしたリスクにはトルコ国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の関連も含まれる。どれも経営に響く問題ではないもようだが、欧州銀への伝染が意識されるとき、米銀も無関係とはいえない。


「延長保証」って何

無知を晒しているだけかもしれないが「延長保証」が何のことを言っているのか分からなかった。「デリバティブなどにまつわる潜在的なリスク負担」の一部であり「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の関連も含まれる」という「延長保証」について色々と調べてもみたものの、ヒントさえ見つけられなかった。日経の読者には大塚記者の説明で伝わるのだろうか。

延長保証」が分からないのだから「136億ドル」がどういう数字かも判断できない。CDSで「136億ドル」と言われれば「想定元本ベースの数字なのかな」と推測できる。だが、「延長保証」だとお手上げだ。

次に移ろう。

【日経の記事】

ゴールドマン・サックスの米国株ストラテジスト、デービッド・コスティン氏らによると、中国、ブラジル、インドなど主要新興国での売上比率が高い企業群のうち23%が直近の決算で売上高の市場予想を大きく下回った。主要500社のおよそ2倍に及ぶ。これらの企業群でつくる株価指数の上昇率は年初来で5.5%とS&P500種の8.0%に見劣りする。



◎「大きく」と言われても…

経済記事ではデータが重要だ。できるだけ具体的な数字を記事で示してほしい。「主要新興国での売上比率が高い企業群」の中で「直近の決算で売上高の市場予想を大きく下回った」企業の比率が「23%」という数字に意味はない。

売上比率が高い」「売上高の市場予想を大きく下回った」の基準が不明だからだ。例えば「大きく下回った」を「10%以上下回った」にするか「50%以上下回った」にするかで該当する企業の比率は「大きく」変わるはずだ。

大塚記者は「これらの企業群でつくる株価指数の上昇率は年初来で5.5%とS&P500種の8.0%に見劣りする」とも書いているが、「5.5%」と「8.0%」ならば大差ない。この流れで対比させるならば「これらの企業群でつくる株価指数」が年初来で下げていてほしい。

こんな感じでツッコミは入れてみた。とは言え、大きな問題ではない。ツッコミどころの少ないマーケット関連記事を書ける大塚記者は日経では貴重な存在だ。

大塚記者が書いた記事を100本近くは読んでいる気がする。それでもツッコミを入れる余地がわずかしかなかった点は高く評価したい。「無事これ名馬」とでも言いたくなる記者だ。


※今回取り上げた記事「ウォール街ラウンドアップ~トルコショック、米国株に死角
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180814&ng=DGKKZO34128600U8A810C1ENI000


※記事の評価はC(平均的)。過去の記事も含めた判断で大塚節雄記者への評価はB(優れている)とする。

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