2018年7月4日水曜日

「撃たれても文句言えない」の状況が謎な日経「春秋」

日本経済新聞の朝刊1面のコラム「春秋」はレベルが高いとは言えない。「論説委員に好き勝手に書かせ過ぎでは?」と感じることも多い。3日の記事もそうだった。以下の文を読んで「あなたはいま私に撃たれても文句は言えませんよ」が腑に落ちるか考えてみてほしい。
ハンググライダー発進基地(福岡県久留米市)
           ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

経済事件で姿を消した会社社長を探しに、オーストラリアまで取材に出かけたことがある。かつて住んでいたという街で話を聞いていたら、警察関係者の自宅を教えてもらった。その足で訪ねると、先方は苦笑いで「あなたはいま私に撃たれても文句は言えませんよ」。

日本との勝手の違いに青くなった。が、わざわざ海を越えてやって来た記者の振る舞いにあきれ果てたと見えて、幸い銃は使わず話を聞いてくれた。こちらの関心事については何も知らなかったが、「KOBAN」のことは知っていた。日本語で通用する交番は、地域の治安を支える仕組みとして海外でも評価されている。


◎どう「勝手」が違う?

なぜ筆者が「あなたはいま私に撃たれても文句は言えませんよ」と言われたのか理解に苦しむ。「オーストラリア」と日本でどういう「勝手の違い」があるのか。「警察関係者の自宅」を訪ねた者は銃で撃たれても文句が言えないのが「オーストラリア」のルールなのか。ちょっと考えにくい。

実際に「あなたはいま私に撃たれても文句は言えませんよ」と言われたのだから、何か事情があるのだろう。この話を使うのならば、そこを説明してくれないと困る。

せっかくなので、記事の後半にも注文を付けておこう。

【日経の記事】

その安全・安心の拠点が狙われた、富山市の交番襲撃事件は余波が続いている。渡り廊下などに銃弾を撃ち込まれ、臨時休校していた奥田小学校はきのう授業の再開を予定していた。それが突然、延期となった。新聞社宛てに「学校を襲う」との予告のメールがあったことが理由だという。何という悪辣な行為であろうか。

奥田小学校は事件を受けて通学路を見直し、保護者や地域の人たちは見守りの活動を強化するなど安全対策を進めている。警察と学校、保護者、地域が手を取り合って事件を乗り越え、1日も早く子どもたちが安心して通える小学校に戻ることを祈りたい。取り組みの要になるのはもちろん、日本が世界に誇る交番である



◎通学路の見直しは「安全対策」?

奥田小学校は事件を受けて通学路を見直し、保護者や地域の人たちは見守りの活動を強化するなど安全対策を進めている」と書いてあると、通学路の見直しは「安全対策」の一環だと理解したくなる(「そうではない」との解釈も可能だが、少数派だろう)。

しかし、通学路の見直しがなぜ「安全対策」になるのかとの疑問が残る。やはり、これは「安全対策」ではないようだ。毎日新聞は6月30日付の記事で以下のように報じている。

富山市久方町の富山中央署奥田交番で、警部補が刺殺されたうえ拳銃を奪われ、近くの市立奥田小学校にいた警備員が射殺された事件を受け、市教委は、週明け以降と見込まれる学校再開後、児童の通学路を変更することを決めた。豊田高久・学校教育課長によると、現場となった交番や同校正門をできるだけ通らないよう、別の場所に臨時の出入り口を設置し、地域住民や保護者、教職員で子どもたちを誘導する

これならば納得できる。「春秋」の書き方には問題ありだ。

子どもたちが安心して通える小学校に戻る」上で「取り組みの要になるのはもちろん、日本が世界に誇る交番である」との説明も引っかかった。「現場となった交番や同校正門をできるだけ通らないよう」に通学路を見直しているのに、事件の「現場となった交番」が「取り組みの要」になれるだろうか。あるいは、その次に奥田小学校に近い交番が「」になるとの趣旨なのか。いずれも同意しがたい。


※今回取り上げた記事「春秋:経済事件で姿を消した~」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180703&ng=DGKKZO32532590T00C18A7MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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