だんごあん(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です |
記事では最初の段落で「日本各地で過去最高気温を更新するなど記録的な猛暑となっている。西日本豪雨のような異常気象が相次ぐほか、米国やアフリカなど世界各地でも最高気温を記録している。専門家は異常気象は長期的な地球温暖化の傾向と関係があると指摘している」と書いている。
これを踏まえて専門家の見方を検証していこう。
【日経の記事】
降水量も変動してきた。日本では1日の降水量が100ミリ以上の年間日数は増加しており、200ミリ以上の大雨も増加傾向が明らかに表れている。気象研究所の今田由紀子主任研究官によると、「温暖化が進むと気温が上がり水蒸気量が増えるので雨が増える傾向にある」と話す。今後、温暖化が西日本豪雨のような局地的な大雨にどのような影響を与えるかを探るため17年の九州北部豪雨を事例に解析を進める。
防災科学技術研究所も西日本豪雨を分析。積乱雲が同じ場所で次々と形成される「バックビルディング現象」で線状降水帯が生まれ激しい雨が降った。前坂剛主任研究員は「温暖化とバックビルディングの関係はわからない」とするが、今後も警戒が必要だ。
◎この2人は違うような…
「西日本豪雨を分析」した「防災科学技術研究所」の「前坂剛主任研究員」は「温暖化とバックビルディングの関係はわからない」と言っているのだから「温暖化が関係」 と断定した「専門家」には当たらない。
「気象研究所の今田由紀子主任研究官」は微妙ではあるが、「温暖化が進むと気温が上がり水蒸気量が増えるので雨が増える傾向にある」と言っているだけで「異常気象は長期的な地球温暖化の傾向と関係がある」と明言はしていない。「今後、温暖化が西日本豪雨のような局地的な大雨にどのような影響を与えるかを探るため17年の九州北部豪雨を事例に解析を進める」のだから、現時点で断言はできないとの立場だと思える。
この2人は「温暖化が関係」 と断定した「専門家」ではなさそうだ。次を見ていこう。
【日経の記事】
WMO(世界気象機関)は「6~7月の異常気象が温暖化に起因するかは特定できないが、長期的な温暖化ガスの上昇傾向と整合性がある」としている。WMOによると16年に大気中のCO2濃度は400PPM(PPMは100万分の1)を超え、過去80万年で最高記録を更新した。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今後も温暖化の傾向が続くと、異常気象や生態系破壊などのリスクが深刻になると警告している。
◎結局、誰も断言せず?
「WMO」も「6~7月の異常気象が温暖化に起因するかは特定できない」と言っているのだから「温暖化が関係」 と断定した「専門家」とは言い難い。「政府間パネル(IPCC)」も「今後も温暖化の傾向が続くと、異常気象や生態系破壊などのリスクが深刻になると警告している」と将来のリスクに言及しているだけだ。
結局、今年の「記録的な猛暑」や「西日本豪雨のような異常気象」に関して「温暖化が関係」 と「専門家」が断言している事例は見当たらない。多くの専門家が「関係があってもおかしくない」とは見ているのだろう。それは記事のコメントからも伝わってくる。しかし、断定的に「『温暖化が関係』と専門家」と見出しに取るのは感心しない。
これは見出しを付ける整理部の担当者というより、筆者の浅沼直樹記者の責任だ。最初の段落で「専門家は異常気象は長期的な地球温暖化の傾向と関係があると指摘している」と書いてあれば「『温暖化が関係』と専門家」と見出しに取るのは理解できる。書き方としては「異常気象は長期的な地球温暖化の傾向と関係があってもおかしくないと指摘する専門家もいる」ぐらいが適切だと思えるが…。
※今回取り上げた記事「猛暑、世界的な現象 『温暖化が関係』と専門家 豪雨リスクも増大」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180722&ng=DGKKZO33259330R20C18A7EA5000
※記事の評価はC(平均的)。浅沼直樹記者への評価も暫定でCとする。
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