2018年4月12日木曜日

解読困難な日経 奥平和行編集委員「岐路に立つネット覇者」

11日の日本経済新聞夕刊1面に載った「岐路に立つネット覇者」という解説記事はツッコミどころが多すぎる。解読が困難な部分もある。1面に編集委員が署名入りで解説記事を書いているのに、この出来では辛い。筆者の奥平和行編集委員に今後この手の解説を任せるのは避けるべきだ。
門司港(北九州市)※写真と本文は無関係です

記事を見ながら具体的に指摘していく。

【日経の記事】

米上院議員の半数近くが出席する異例の公聴会となった。5時間に及ぶ「政治ショー」で米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は情報流出問題の再発防止策などについて説明を重ねたが、一件落着となるかは予断を許さない。

「ばかげている」。2016年の米大統領選の直後、ザッカーバーグ氏はフェイスブックが選挙の結果に影響を及ぼしたとの指摘を一蹴した。大学の寮の一室でフェイスブックが誕生した14年前と現在とでは立ち位置が異なるのは当然だが、その自画像と周囲からの見え方の間にはまだ差があると言わざるをえない

公聴会でも出席議員がフェイスブックの「利用一時停止」と「退会」の違いを確認する場面があった。一部の利用者を相手にしているときは当たり前でも、世界で20億人規模が使うサービスとなった今、全ての利用者に寄り添うことが欠かせなくなっている


◎「差があると言わざるをえない」根拠は?

その自画像と周囲からの見え方の間にはまだ差があると言わざるをえない」と奥平編集委員は言うが、その根拠がよく分からない。ザッカーバーグ氏の「ばかげている」との発言から何かを読み取っているのかもしれないが、この発言だけで「まだ差がある」と言われても困る。

強引に推測すれば、「自画像」では大学生の起こした小さな企業のままなのに、「周囲からの見え方」はもっと大きな存在だと言うことか。だが、ザッカーバーグ氏もさすがにフェイスブックを大した影響力を持たない小さな企業だとは思っていないだろうし、そうした話も記事には出てこない。

もっと分からないのは「公聴会でも出席議員がフェイスブックの『利用一時停止』と『退会』の違いを確認する場面があった」とのくだりだ。これは「自画像と周囲からの見え方の間にはまだ差があると言わざるをえない」と言える根拠かなとも考えたが、関連がなさそうに見える。

この後の「一部の利用者を相手にしているときは当たり前でも、世界で20億人規模が使うサービスとなった今、全ての利用者に寄り添うことが欠かせなくなっている」との解説と関連するのかもしれないが、これまたどう関連付けてよいのか解読できなかった。

この「一部の利用者を相手にしているときは当たり前でも、世界で20億人規模が使うサービスとなった今、全ての利用者に寄り添うことが欠かせなくなっている」という部分も、やはり何が言いたいのか判断に迷う。「全ての利用者に寄り添う」のが好ましいのは、創業当初も今も変わらないだろう。

一部の利用者を相手にしているときは当たり前」と言うのは、最初は「全ての利用者に寄り添うこと」が「当たり前」と言っているのかと思った。何度も読むと「『利用一時停止』と『退会』の違い」は「一部の利用者を相手にしているとき」には、改めて説明する必要がない「当たり前」のことだったとの意味かもしれない思えてきた。

結局はどう解釈するのか断定できないままだ。じっくり読んでも解釈に迷うような記事は、それだけでダメだ(読み手の読解力が低すぎる可能性も残るが…)。

記事の後半も見ていこう。

【日経の記事】

米IT(情報技術)業界には当局との摩擦が禍根を残した先例がある。かつて米司法省と争い、会社分割寸前まで追い込まれた米マイクロソフト(MS)だ。MSは同省への対応に手間取り、社内も萎縮したという。



◎無駄な「MS」

ここでは細かい点を1つ。「MS」が不要だ。「米マイクロソフト(MS)だ。MSは同省への対応に~」のくだりは「米マイクロソフトだ。同社は同省への対応に~」で事足りる。無駄に文字数を増やす必要はない。
甘木公園の噴水と桜(福岡県朝倉市)
           ※写真と本文は無関係です

続きを見ていこう。

【日経の記事】

その結果、パソコンの基本ソフト(OS)では覇権を握ったが、スマートフォンやネットの流れからは取り残された。ネットの覇者となったフェイスブックも岐路に立っている。

ネット業界にとっても分かれ道だ。「フェイスブックはIT企業か、出版社か」。公聴会で問われたザッカーバーグ氏は「当社はコンテンツを作っていないが、コンテンツには責任を負っている」と説明した。中立なプラットフォーム(基盤)を自任することが多かったネット企業は、社会的な影響力を含め偽ニュースの排除などより多くの責任を背負う局面に入っているといえる。



◎フェイスブックは「ネットの覇者」?

ここでは「ネットの覇者となったフェイスブック」との記述が引っかかった。「覇者」とは「1.徳によらず、覇道によって天下を治める者 2.競技などで優勝した者」(デジタル大辞泉)という意味だ。

だとすれば、「ネットの覇者」が複数いるとは考えにくい。「フェイスブック」が「ネットの覇者」ならばアルファベットやアマゾン・ドット・コムはフェイスブックの下に位置しているのだろう。ただ、個人的には違和感がある。株式時価総額で見てもフェイスブックの方が下のようだ。強いて言えばアルファベットが「ネットの覇者」のように見える。

もちろん何を基準にするかで変わってくる話ではある。だが、見出しで「岐路に立つネット覇者」と打ち出せるほど「フェイスブックネットの覇者」との見方は浸透していない気がする。


※今回取り上げた記事「岐路に立つネット覇者
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180411&ng=DGKKZO29244570R10C18A4MM0000


※記事の評価はD(問題あり)。奥平和行編集委員への評価はDで確定とする。奥平編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「空飛ぶクルマ」の記事で日経 奥平和行編集委員に問う 
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_15.html

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