2018年3月21日水曜日

日経「調査報道を強化」宣言に感じる期待と不安

21日の日本経済新聞朝刊1面の「限界都市~再開発が招く住宅供給過剰 タワマン併設5割に上昇 人口減、ゆがむ街の姿 」という記事の最後に、「調査報道」に関する気になるお知らせがあった。さらに言えば、記事の筆者も「調査報道班=鷺森弘、藤原隆人、斉藤雄太、学頭貴子」となっていた。
九州鉄道記念館(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

日本経済新聞は政府や自治体、企業が明らかにしない重要事実を、独自取材で掘り起こす調査報道を強化します。様々な公開情報や統計を新たな切り口で分析し、知られざる実態を浮かび上がらせるデータジャーナリズムの手法も駆使します。その一環として、人口減少でゆがみが生じてきた都市問題を追います。


◎調査報道の強化は歓迎したいが…

調査報道の強化は歓迎すべきことだ。待っていれば発表されるネタを発表前に報じる「早耳情報型の特ダネ」は経営的にも社会的にも意味がないのに、日経は早耳情報の入手に多くの労力を割いてきた。

しかし、日経が調査報道重視に大きく舵を切る可能性は1割もないと予想している。「調査報道班」を立ち上げたところからも、それが読み取れる。「基本的には早耳情報を取ってくるこれまで通りのやり方ですよ。でも、調査報道もやった方がいいので調査報道班を作りました」という話ならば、多くは期待できない。

本当に日経が調査報道を強化したいならば、まずは「早耳情報を記事にしても社長賞や編集局長賞は出さない」という方針を打ち出すべきだ。

日経の岡田直敏社長は年初の経営説明会で「デジタルファースト」を強調し、「電子版の価値を高めたスクープには編集局長賞や社長賞を出すようにするなど、目に見える形で記者やデスクを評価したい」と述べている。この「スクープ」には早耳情報型の特ダネも含むと思われるので、「調査報道班」以外の記者の多くは相変わらず早耳情報を狙って走り回るのだろう。

結果として、無駄に労働時間が増える。さらには、ネタ欲しさから取材先への気遣いが強まり、批判的な記事が書けなくなる。昔から、「早耳情報重視は百害あって一利あるかどうか」と訴えてきた。これから日経が変わっていけるのか。「調査報道班」の動向とともに注視していきたい。


※今回取り上げた記事「限界都市再開発が招く住宅供給過剰 タワマン併設5割に上昇 人口減、ゆがむ街の姿 
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180321&ng=DGKKZO28401600R20C18A3MM8000

※記事の評価は見送る。

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