諫早公園の大クス(長崎県諫早市) ※写真と本文は無関係です |
【日経へのメール】
日本経済新聞社 若狭美緒様 石塚由紀夫様
22日の朝刊未来学面に載った「ポスト平成の未来学 第5部 少子社会の針路~林業ガール 相棒はIT 消える男女別職種」という記事について意見を述べさせていただきます。
まず気になったのが、本文に「林業ガール」が見当たらないことです。記事では「第1次産業である林業は人手不足が深刻なうえ、力仕事が多く、急斜面での作業など厳しい労働環境で女性の従事者が少ない」「一部地域では女性の林業従事者が増えている。人工知能(AI)も組み合わせれば、1次産業でも少ない人手で高い生産性を実現することが可能になりそうだ」などと書いていますが、「女性の林業従事者」そのものは登場しません。
「林業向けIT(情報技術)システム開発のベンチャー、ウッドインフォ(東京・練馬)が手掛ける作業で、計測に取り組む女性」は出てきます。ただ、この女性が「ウッドインフォ」の従業員であれば、「林業従事者」ではなく「情報サービス業従事者」とでも捉えるべきでしょう。
この事例から「消える男女別職種」(「男女別職種=どちらかの性別の人しかいない職種」と解釈しています)という見出しを導くのも厳しいと思えます。既に述べたように、記事に登場する「女性」は「林業従事者」ではないので、男性のみの職種に女性が進出してきた事例とは言えません。
記事には「(林業)従事者の9割は男性だ」との記述もあります。だとすれば1割は女性がいるので、そもそも林業は「男女別職種」に当てはまりません。
カルビーの事例にも引っかかる記述がありました。記事では「結局のところ女性が活躍できる職場とは多様な働き方を認める職場ということなのだろう。カルビーのようなフラットな組織はその一つの方法だ」と記していますが、カルビーの組織が「フラット」だと納得できる説明はありません。
「カルビーのオフィスはフリーアドレス制」で「ワンフロアのオフィスは会議室にも役員室にも壁がない」のは分かりました。しかし、だから組織が「フラット」だとは限りません。ピラミッド型の組織と「フリーアドレス制」は両立します。
記事からは「フラットな組織」にすると「多様な働き方を認める職場」になるとの印象を受けます。これも、よく分かりません。ピラミッド型の組織でも多様な働き方を認めることはできますし、フラットな組織と均一的な働き方も両立します。フラットな組織の方が多様な働き方を認めやすいという感じもありません。
最後に、以下の記述に関して意見を述べます。
「私は2人の子どもを育てるワーキングマザーだ。働く時間に制約を抱えながらニュースと向き合うジレンマに悩み続けてきた。ITなどを活用すれば効率よく働けるはずだが、男性記者と同じように働こうと思っても、子どもを寝かしつけてからの深夜の記事執筆は正直つらい」
問題としたいのは「男性記者と同じように働こうと思っても」という部分です。男性記者の中にも子育てと仕事の両立に悩みながら仕事をしている人がいても不思議ではありません。また、女性記者の中には独身で仕事に没頭している人もいるでしょう。
なのに、記事では「男性記者と同じように働こうと思っても」と記しています。「男性記者は子育ての負担を全く負っていない。女性記者は全員がワーキングマザー」といった前提があるならば話は別ですが、あり得ないはずです。
「子育ての負担がない記者と同じように働こうと思っても」などと記せば問題は解決します。「男性記者」と言い切ってしまうところに筆者の偏見を感じました。
意見は以上です。今後の記事作りに生かしていただければ幸いです。
◇ ◇ ◇
「私は2人の子どもを育てるワーキングマザーだ」との記述から判断すると、「林業ガール 相棒はIT 消える男女別職種」という記事は若狭美緒記者が書いたのだろう。石塚由紀夫記者は「『オールド・ボーイズ・ネット』に風穴」という関連記事を担当したと思われる。この関連記事については別の投稿で触れる。
※今回取り上げた記事「ポスト平成の未来学 第5部 少子社会の針路~林業ガール 相棒はIT 消える男女別職種」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180322&ng=DGKKZO28406280R20C18A3TCP000
※記事の評価はD(問題あり)。若狭美緒記者への評価は暫定でDとする。
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