福岡空港(福岡市博多区)※写真と本文は無関係です |
さらには、世に出回っている自動運転レベル3以下のクルマに乗る人もゼロにしなければならない。常識的に考えると、かなり時間がかかりそうだ。取材班(山崎良兵副編集長、佐伯真也記者、庄司容子記者、小笠原啓副編集長)は特集の中で「遠からず消え去る」と言える根拠を提示しているだろうか。
この問題に触れていると思われる「PART 3~走る5000万台 笑う業界、泣く業界 2030年、クルマと社会はこう変わる」という記事の一部を見てみよう。
【日経ビジネスの記事】
2030年には新車販売の半分が「レベル4」以上の自動運転車になる──。こんな予測を示すのは、米コンサルティング会社のPwC Strategy&だ。米国、欧州、中国といった世界の主要市場で、大半の場面でドライバーが不要になる完全自動運転のクルマが販売の主流になるという。
◎2030年でもレベル4以上は半分止まり…
「2030年には新車販売の半分が『レベル4』以上の自動運転車になる」としても、半分は「人間がハンドルを握ってクルマを運転する」場合もあるレベル3以下だ。しかも、2029年までに販売されたクルマが色々なところを走り回っている。12年後でも「人間がハンドルを握ってクルマを運転する光景」が「消え去る」可能性はゼロに近い。
だとすると「消え去る」のはいつなのか。結局、取材班は答えを示してくれない。「見えてきたクルマの未来」とのタイトルを付けて「人間がハンドルを握ってクルマを運転する光景は、遠からず消え去る」と冒頭で言い切ったのは何だったのか。騙しだと言われても仕方がない。
ついでに、記事の中の「渋滞時間~全て自動運転なら解消 一部だけなら悪化も」という解説にも注文を付けたい。記事では以下のように説明している。
【日経ビジネスの記事】
自動運転車は交通規則を順守する。これが常識だ。全てのクルマが自動運転車になれば、車間距離を一定に保ち、ブレーキのタイミングなども完璧で、渋滞が起こらないとされている。
◎「全て自動運転なら渋滞解消」はあり得ない
「全てのクルマが自動運転車になれば、車間距離を一定に保ち、ブレーキのタイミングなども完璧で、渋滞が起こらない」という考え方に取材班のメンバーは疑問を持たなかったのだろうか。少し考えれば、あり得ないと分かるはずだ。
100台しか収容できない駐車場に1000台の自動運転車が入ろうとしている状況を考えてみよう。「車間距離を一定に保ち、ブレーキのタイミングなども完璧」だとしても、駐車場の入口から車の列ができてしまう。この渋滞は自動運転では解決できない。
事故が起きた場合も同じだ。自動運転でも事故をゼロにはできない。路上で事故が起きたてクルマの流れが止まれば、必然的に渋滞が発生する。記事を書く上で、そうした可能性は考慮しなかったのだろうか。
※今回取り上げた特集「見えてきたクルマの未来」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/020600910/?ST=pc
※特集全体への評価はC(平均的)。山崎良兵副編集長への評価はCで確定とする。佐伯真也記者、庄司容子記者、小笠原啓副編集長への評価は暫定でCとする。
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