筑後大石駅に停車中のディーゼルカー220DC (福岡県うきは市)※写真と本文は無関係です |
記事の前半部分は以下のようになっている。
【日経の記事】
モロッコ南部に自生する「アルガン」。実から取れるオイルを米ハリウッドスターらがスキンケアで愛用しているとの情報が交流サイト(SNS)などで流れ、約10年前から人気に火が付いた。今や米アマゾンで4万点の関連商品が販売されるヒット商品だ。
家内工業による小規模生産だったが、大規模な生産組合が次々と誕生。生産量は現在の年4千トンから2020年には1万トンに伸びる見通しだ。欧州連合(EU)や米国など50カ国以上と自由貿易協定(FTA)を締結する同国は10億人にのぼる世界市場に売り込みをかける。
国や大企業を中心としたこれまでのグローバリゼーションは先進国が天然資源などの第1次産品を途上国から購入し、途上国はそこで得た外貨で先進国から工業製品を輸入する「南北貿易」がエンジンだった。しかし資源価格に依存する経済は脆弱で雇用も不安定。そんな途上国が自ら自由貿易に身を投じることで自立への道を歩み始めた。
かつてフランスの植民地だったモロッコも1次産品のリン鉱石の輸出国だが、今では自動車産業の一大集積地だ。仏自動車大手ルノーが年約40万台を生産し、その大半を欧州に輸出する。急速なIT(情報技術)の普及も途上国の追い風となっている。
◇ ◇ ◇
パーム油なども一次産品に含めるのが一般的なので、常識的に考えれば「アルガンオイル」も一次産品だ。だとすると、先進国がモロッコから「アルガンオイル」を輸入した場合、「先進国が天然資源などの第1次産品を途上国から購入」する「これまでのグローバリゼーション」に当てはまるはずだ。
他にも疑問点が浮かぶので列挙してみる。
◎「大規模生産」になった?
「家内工業による小規模生産だったが、大規模な生産組合が次々と誕生」と書いてあると、「家内工業による小規模生産」から「大規模生産」に移行している印象を受ける。しかし、「大規模な生産組合」の構成員が「家内工業による小規模生産」を手掛けていてもおかしくはない。
常盤橋(北九州市小倉北区)※写真と本文は無関係です |
「生産組合」とは「小規模生産」をしている人の集まりなのか。それとも生産規模そのものが変わってきているのか。そこは明確にしてほしかった。
◎FTA締結国だけに輸出?
「欧州連合(EU)や米国など50カ国以上と自由貿易協定(FTA)を締結する同国は10億人にのぼる世界市場に売り込みをかける」との記述からは、FTA締結国にだけ「売り込みをかける」と取れる。しかし、「FTA」がなくても輸出はできる。常識的には、条件さえ合えばFTA締結国でなくても輸出に応じるはずだが…。
ついでに言うと「米国など50カ国以上と自由貿易協定(FTA)を締結する同国」と表記すると、形式的には「同国=米国」になってしまう。誤解を招く可能性は低いが、「モロッコは10億人にのぼる世界市場に売り込みをかける」とすべきだ。
◎いつの話?
「先進国が天然資源などの第1次産品を途上国から購入し、途上国はそこで得た外貨で先進国から工業製品を輸入する」のが「これまでのグローバリゼーション」だったと記事では解説している。正直言って「いつの話?」と聞きたくなる。
人件費の安い「途上国」に工業製品の生産拠点を移して…といった話は何十年も前からある。少なくとも21世紀に入ってからは、記事で言うような「途上国は一次産品をひたすら輸出」といった状況ではない。
記事では、モロッコが「自動車産業の一大集積地」になっているとも書いている。途上国に自動車メーカーが生産拠点を築く動きは「これまでのグローバリゼーション」にはなかったとでも取材班では判断しているのか。
「世界が大きく変わってきた。パンゲアの扉が開いてきたんだ」と訴えたいのは分かるが、今回のような中身では「材料がないのに強引に訴えている」と言われても仕方がない。
※今回取り上げた記事「パンゲアの扉 つながる世界(3)消える『南北の壁』 自由貿易、途上国を潤す」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180104&ng=DGKKZO25290320T00C18A1MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。
冒頭から不安を感じた日経 正月1面企画「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_2.html
スリランカは東南アジア? 日経「パンゲアの扉」の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_28.html
根拠なしに結論を導く日経「パンゲアの扉」のキーワード解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_8.html
0 件のコメント:
コメントを投稿