2017年12月7日木曜日

エルサレムは「アジアから縁遠い」? 日経 岐部秀光記者に問う

米国によるエルサレム首都認定問題で7日の日本経済新聞朝刊総合2面にドバイ支局の岐部秀光記者が「3宗教の聖地 対立100年、世界の火種に 難民・国境…課題多く」という解説記事を書いている。この中で以下の2つの記述が引っかかった。
塚堂古墳(福岡県うきは市)
        ※写真と本文は無関係です

日本やアジアから縁遠いとも感じるエルサレムの問題は、中東のみならず世界にとっても大きなリスクとなる

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であり、中東だけでなく欧州や米国に暮らすそれぞれの信者にとって心情的に特別な土地だ

前後は以下のようになっている。

【日経の記事】

日本やアジアから縁遠いとも感じるエルサレムの問題は、中東のみならず世界にとっても大きなリスクとなる。

「ユダヤ人のための民族的郷土(ナショナルホーム)をパレスチナに樹立することを支持する」――。第1次世界大戦中の1917年、バルフォア英外相がユダヤ系銀行家のロスチャイルド卿にあてた短い文書がイスラエル独立の根拠になった。英国は並行して大戦後の中東の勢力圏を仏ロと分け合うことを確認し、アラブ人にも独立を約束していた。この英国の「三枚舌外交」が現代の混乱につながる。

今年は「バルフォア宣言」から100年、イスラエルが東エルサレムを占領した67年の第3次中東戦争から50年になる。

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であり、中東だけでなく欧州や米国に暮らすそれぞれの信者にとって心情的に特別な土地だ。エルサレムをめぐる争いはこの100年、世界の火種になってきた。

◇   ◇   ◇

引っかかった点を列挙してみる。

(1)日本はアジアの外?

日本やアジア」と書くと「日本はアジアの一部ではない」との印象を受けるが、常識的にはアジアの一部だ。


(2)エルサレムは「アジアから縁遠い」?

日本やアジアから縁遠いとも感じるエルサレムの問題」と書いているが、個人的にはエルサレムはアジアの一部だと思える。ブリタニカ国際大百科事典はアジアについて以下のように定義している。
天ケ瀬温泉(大分県日田市)※写真と本文は無関係です

ユーラシアの東過半分と付属島からなり,南緯10°から北は北極海にまで広がる地域。東は太平洋,南はインド洋に臨み,西はウラル山脈,ウラル川,カスピ海,大カフカス山脈,黒海,ボスポラス海峡,ダーダネルス海峡を結ぶ線でヨーロッパに接し,南西はスエズ地峡によってアフリカに続く

スエズ地峡」をアジアとアフリカの境目とすれば、エルサレムはアジアに入る。中東をアジアから除く考え方もあるので「エルサレムはアジアの一部」と断定はしない。だが、アジアに含めてもおかしくないエルサレムについて「アジアから縁遠い」と書いてあると違和感はある。

アジアの範囲を狭く見た場合でも「アジアから縁遠い」との説明はどうかと感じた。マレーシアやインドネシアは明らかにアジアの一部で、しかもイスラム教徒が多い国だ。こうした国も含めて「エルサレムの問題」は「アジアから縁遠い」と言えるのか。エルサレムは「イスラム教の聖地」でもあるはずだ。


(3)なぜ「欧州や米国」限定?

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であり、中東だけでなく欧州や米国に暮らすそれぞれの信者にとって心情的に特別な土地だ」と書いてあると、「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教」の信者は、中東以外では「欧州や米国」にしかいないように感じる。実際にはカナダや中南米にも多くのキリスト教徒がいるし、中東以外のアジアやアフリカにもイスラム教徒が多い国はある。「欧州や米国など」と「など」を入れるだけで問題は解決するのだが…。


※今回取り上げた記事「3宗教の聖地 対立100年、世界の火種に 難民・国境…課題多く
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171207&ng=DGKKZO24352680W7A201C1EA2000


※記事の評価はD(問題あり)。岐部秀光記者への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。

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