2017年12月29日金曜日

野口悠紀雄氏のミス対応に見える優れた書き手の条件

長きにわたって、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏を高く評価してきた。その野口氏の記事に続けてミスを見つけたので、記事を載せた週刊ダイヤモンドと週刊エコノミストに問い合わせを送ってみた。
久留米成田山(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係

まず週刊ダイヤモンドは問い合わせを完全無視。18日に間違いを指摘したのに、ネット掲載分さえ修正しなかった。そこで野口氏本人に問い合わせを試みた。以下はそのやり取りだ。野口氏の対応は、優れた記事の書き手に相応しいものだった。

~野口氏への問い合わせ~

早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄様

突然、メールで失礼します。様々な媒体で野口様の記事を拝読している鹿毛と申します。

今月18日に以下の内容で週刊ダイヤモンド編集部に問い合わせを送りましたが、26日までに回答を受け取っていません。野口様のところに、この問い合わせは届いているのでしょうか。

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

12月23日号「『超』整理日記 Number 886~神の問い掛けにこそ答える価値がある」という記事の中の「常識的な答えは、『選択を変えても変えなくても勝てる確立は同じ』ということだ」とのくだりに出てくる「確立」は「確率」の誤りではありませんか。誤りの場合は次号に訂正を出してください。回答をお願いします。



単純な変換ミスだと思えますが、いかがでしょうか。次号に訂正も出ていませんでした。回答・訂正をしなかった事情も教えていただけると助かります。

さらに今日、週刊エコノミスト編集部に以下の内容で問い合わせを送っています。こちらにも回答していただければ幸いです。

【エコノミストへの問い合わせ】

2018年1月2・9日合併号の「出口の迷路~金融政策を問う(13)短期金利2%なら36兆円の逆ザヤに」という記事についてお尋ねします。記事には「(日銀が)金利増による支払増を避けるためには、国債を売却して当座預金残高を減らす必要がある。しかし、そうすると含み益が現実化してしまう。それが具体的にどの程度の損失になるかは、国債保有額、償還までの残存期間、そして、金利上昇幅による」との記述があります。

含み益が現実化してしまう」のであれば、「利益」が出そうなものですが、「それが具体的にどの程度の損失になるかは~」と「損失」の話が続きます。この後にも「(国債を)一気に売却しても満期持ちしても、損失額は大きくは変わらないということになる」などと出てきます。記事中の「含み益」は「含み損」の誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
大牟田駅(福岡県大牟田市)※写真と本文は無関係です


問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。


~野口氏からの回答~

私の記事をご覧いただき、ありがとうございます。12月26日(火) 付けのご連絡、ありがとうございます。

1『週刊ダイヤモンド』、12月23日号「『超』整理日記 Number 886~神の問い掛けにこそ答える価値がある」の中の「確立」は、正しくは「確率」です。

2.『エコノミスト』1月2・9日合併号の「出口の迷路~金融政策を問う(13)短期金利2%なら36兆円の逆ザヤに」の中の「含み益」は、正しくは「含み損」です。

以上2点、編集部に訂正掲載を依頼します。ご指摘をありがとうございました。

◇   ◇   ◇

野口氏は誤りを認めているし「編集部に訂正掲載を依頼します」と明言している。なのに、29日午前の段階で週刊ダイヤモンドはネット掲載分を「確立」のまま放置している。週刊エコノミストも問い合わせから丸2日以上が経った段階で回答なしだ。次号で訂正が載るかどうかは微妙だが、「間違い指摘を無視したい」という両誌の意思は強固なようだ。


※記事の評価はいずれもD(問題あり)。ただ、瑣末なミスであり、きちんと誤りを認めている。そうした点を総合的に判断して、野口悠紀雄氏への評価はA(非常に優れている)を据え置く。

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