2017年11月3日金曜日

「個人は米国株の投資拡大」が怪しい日経ビジネスの記事

日経ビジネス11月6日号「時事深層 MARKET~16連騰の日本株より米国株 個人投資家が熱い視線」という記事によると、日本の個人投資家は「史上最長の16連騰を記録した日本株は売りに回りつつ、米国株への投資を拡大」しているという。だが、どうも怪しい。記事で「投資を拡大」の根拠に関わる部分を見てみよう。
ヒガンバナと耳納連山(福岡県久留米市)
      ※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

国内に目を転ずれば、10月に日経平均株価が過去最長の16連騰を記録するなど、日本株相場も米国に劣らず活況を呈している。しかし、個人投資家の多くは実は日本株の売りに回っている。東京証券取引所が毎週発表する投資部門別株式売買動向を見ると、10月の買いを主導したのは外国人投資家だ。個人投資家の動向は、新規買いより利益確定の売りが大きく上回っている。

一方で、米国株に関して日本の個人は旺盛な投資意欲を見せている。大和証券では、今年4~9月の米国株を含む外国株の売買代金が半期ベースで過去最高額を更新した。前年同期比では2倍の規模だ。ネット証券のSBI証券も、今年1~9月の米国株の売買代金が、前年同期比81%増となった。


◎売買代金が増えれば「投資拡大」?

上記の説明にはいくつか問題がある。「個人投資家の多くは実は日本株の売りに回っている」根拠としては、個人が売り越しとなっていることを挙げている。これはいい。一方、米国株については「大和証券」も「SBI証券」も「売買代金」を使っている。

相場上昇を受けて利食い売りが活発になった場合でも「売買代金」は膨らむ。「売買代金」が増えているからと言って「旺盛な投資意欲を見せている」とは断定できない。

さらに言えば、「大和証券」も「SBI証券」も「売買代金」が個人に限ったものではない。「大和証券」に至っては「米国株」の「売買代金」ではなく、「米国株を含む外国株の売買代金」だ。これでは、日本の個人投資家が米国株への投資を拡大しているのかどうかを判断する材料にはならない。

個人投資家を米国株へ誘導しようとする証券会社に乗せられて筆者の武田安恵記者は記事を書いてしまったのではないか。そう疑いたくなる内容だった。
日本経済大学(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

ついでに気になった点を2つ指摘しておく。

【日経ビジネスの記事】

保有する時価約500万円のアマゾン株の株価が決算発表後、10%以上も値上がりしたからだ。



◎「株価が値上がり」は重複表現

株価が値上がり」は重複表現だ。「アマゾン株の株価」にもダブり感がある。「アマゾンの株価が決算発表後、10%以上も上がったからだ」「アマゾン株が決算発表後、10%以上も値上がりしたからだ」などとした方がよい。

今回の記事には、意味のない繰り返しも見られた。


【日経ビジネスの記事(最初の段落)】

堅調な相場が続く米国株。日本の個人投資家の投資意欲も拡大している。米大手IT企業の世界での成長力に注目するほか、企業寄りとみられるトランプ政権の姿勢が背景だ。証券会社は手数料の値下げなどで取引拡大を狙うが、米株相場の「過熱」を指摘する声もある

【日経ビジネスの記事(最後の段落)】

史上最長の16連騰を記録した日本株は売りに回りつつ、米国株への投資を拡大する個人投資家。ただし、トランプ氏の当選以降、米国株は約3割値上がりした。「過熱」を指摘する声もある


◎同じことを2度書いても…

最初の段落は「これから、こういう話を書いていきますよ」というお知らせのようなものだ。2段落目以降で、詳しく読者に伝えていくことになる。米国株に関して「『過熱』を指摘する声もある」と最初に入れたのならば、その「」がどんなものか具体的に紹介すべきだ。なのに記事では「『過熱』を指摘する声もある」と繰り返しているだけだ。これは無駄だ。2回も「『過熱』を指摘する声もある」と読まされた挙句、どんな「」なのかは教えてもらえない読者の身になってほしい。


※今回取り上げた記事「時事深層 MARKET~16連騰の日本株より米国株 個人投資家が熱い視線
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/103000800/?ST=pc


※記事の評価はD(問題あり)。武田安恵記者への評価はDで確定とする。

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