太刀洗レトロステーション(福岡県筑前町) ※写真と本文は無関係です |
その問題は後で言及するとして、まずは記事の最初の方を見ていこう。
【日経の記事】
山一証券の経営破綻から24日でちょうど20年が経過し、日本株市場では長期投資が報われる素地が整ってきた。足元の株高によって株式投資の長期パフォーマンスが現金を明確に上回り、株価の過度な割高さも修正された。個人投資家の間では目先の株価に一喜一憂せず、積み立て投資で長期の資産形成をめざす動きが広がっている。
日本株の長期投資がこれまで機能しなかった最大の要因は、山一破綻後にデフレ圧力が急速に強まったことだ。実際、株価指数に連動する投資信託を1996年末に100万円購入したとすると、2000年前後のIT(情報技術)バブル期など一部の時期を除いて、運用成績は預金に負け続けてきた。デフレによる「現金の実質価値の増大」が根底にある。
だが、10月以降の株高で風景は変わった。96年末に日本株投信を購入した場合の運用成績は足元で約40%のプラス。預金を大幅に上回り、「長期投資が報われる局面」となってきたことを裏付ける。この変化が個人投資家にも意識改革を促し、「積み立て投資」が増え始めている。
◎「10月以降の株高で風景は変わった」?
嶋田記者は「10月以降の株高で風景は変わった」と言うが、根拠は乏しい。記事に付けたグラフを見ても、2013年以降は「96年末に日本株投信を購入した場合の運用成績」が「預金」をほぼ上回っている。「10月以降」はその度合いが強まっているだけなのに、「10月以降の株高で風景は変わった」と断定するのは、かなり苦しい。
ゆめタウン久留米と筑後川(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
そもそも「山一証券の経営破綻から24日でちょうど20年が経過」したからと言って、「96年末」と比べる必要はない。日経平均株価が最高値を付けた1989年末と比べると「長期投資が報われる局面」に入ってきたか怪しくなるはずだ。
前置きはこのくらいにして本題に入ろう。
【日経の記事】
中国地方に住む個人投資家Aさんは最近、勤め先を早期退職した。08年のリーマン・ショック後に始めた日本株の積み立て投資が功を奏し、1億円を超える資産ができたためだ。「それまでは投信や個別株を勘で売買していたら資産が減った。やめようと思っていたときにさわかみ投信の積み立てを始め、そこから増え始めた」という。
◎「さわかみ投信」は他の投信より優れてる?
他の投信で損を出して「(投資を)やめようと思っていたときにさわかみ投信の積み立てを始め」「1億円を超える資産ができた」という「個人投資家Aさん」を取り上げている。これだけ読むと「さわかみ投信」は他の投信よりも優れた投資対象だとの印象を受ける。
嶋田記者がそう確信しているのならば、せめて根拠となるデータは示してほしい。「リーマン・ショック」で資産を減らし、その後に「さわかみ投信の積み立てを始め」たのならば、「さわかみ投信」から利益が得られるのは当然だ。日本株全体が上昇基調になっていくのだから。なのに「さわかみ投信」に特別な実力があるかのように書くのは、嶋田記者が状況を理解していないか、「さわかみ投信」の宣伝担当を買って出ているのかのどちらかだろう。
※今回取り上げた記事「スクランブル~長期投資が報われる 山一破綻20年、積み立て増加」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171125&ng=DGKKZO23893500U7A121C1EN1000
※記事の評価はD(問題あり)。嶋田有記者への評価はDで確定とする。
日経にちょくちょく文句の電話をかけてくる読者がいると聞いたが、まさにこういう人種なんだろうな。すごい。
返信削除