豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です |
【日経の記事】
「自分たちだけでは決められない」。東芝の綱川智社長は半導体売却の調整の中で何度もそう口にした。事業はどこに売るか。そもそも売却はすべきなのか。官邸、監督官庁、銀行と調整先はあまりに多岐にわたった。
経営危機の原因は企業統治をないがしろにした歴代社長の暴走、不作為にあったはずだった。だが当該の西田厚聡、佐々木則夫、田中久雄の3氏が去っても東芝の企業統治は機能不全のままだ。
◎「東芝の企業統治は機能不全のまま」?
中山氏によると今も「東芝の企業統治は機能不全のまま」らしい。その根拠は、東芝が半導体事業の売却を「自分たちだけでは決められない」からだと読み取れる。だが、これは「企業統治は機能不全」だと裏付ける材料なのか。
「企業統治(コーポレートガバナンス)」について調べると「株主などの利害関係者によって企業が統制される仕組み。ワンマン経営のもとでは業績悪化や不祥事に適切に対応しにくいとして、欧米で80年代から研究や制度導入が進められた」(コトバンク)と出てくる。
多くの「利害関係者」が東芝の経営に影響力を持ち、「東芝の綱川智社長」が「自分たちだけでは決められない」と嘆くほどならば「企業統治が機能している」とも評価できる。
記事には「経営危機の原因は企業統治をないがしろにした歴代社長の暴走」という記述もある。この場合、「暴走」と言うぐらいだから「歴代社長」は自分の判断で会社の進む道を決められたはずだ。自分で決めても決められなくても「企業統治は機能不全のまま」ならば、どういう状況になれば「機能」していると言えるのか説明が欲しい。
JR日田彦山線のトンネル(福岡県東峰村) ※写真と本文は無関係です |
読み進めるとさらに疑問が湧く。記事では「変われなかった東芝。とりわけ根深く残ったのは統治不全で銀行、政財界、役所の横やりを受けやすい体質と官民一体の意思決定メカニズムでもあった」とも書いていた。だとすると「歴代社長の暴走」が起きるとは考えにくい。「官民一体の意思決定メカニズム」が働いてきたのならば「歴代社長」の経営判断を「官」も支持してきたはずだ。
この記事には他にも問題がある。それらについては日経に以下の内容で問い合わせを送ってみた。
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞 本社コメンテーター 中山淳史様
「東芝解体~迷走の果て(上)国策会社 根深い統治不全 成長産業生めぬ日本映す」という記事についてお尋ねします。記事中で「東芝の海外展開は輸出の延長としての国際化であり、グローバル化ではなかった」と中山様は断言しています。しかし、記事に付けた「名門企業が一転、経営危機に」というグラフを見ると、2000~09年が「グローバル化」の時期になっており矛盾します。どちらが正しいのでしょうか。
グラフで2010年以降を「経営危機」としているのも解せません。記事の冒頭で中山様は「会計不祥事からもう3年。東芝危機とは一体何だったのか」と記しています。これに従えば「経営危機」は15年以降とするのが適切です。
「不正会計が始まった時点から経営危機に陥っている」との考え方もあるでしょう。この場合、利益水増しは2009年3月期からと言われているようなので「経営危機」の始まりは10年よりもっと前になるはずです。
上記の2点については、中山様の説明に誤りがあると考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が当たり前になっています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として、掲げた旗に恥じぬ行動を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
※今回取り上げた記事「東芝解体~迷走の果て(上)国策会社 根深い統治不全 成長産業生めぬ日本映す」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171001&ng=DGKKZO21756740R01C17A0MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。中山淳史氏への評価もDを据え置く。中山氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経「企業統治の意志問う」で中山淳史編集委員に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_39.html
日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_8.html
日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_87.html
三菱自動車を論じる日経 中山淳史編集委員の限界
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_24.html
「増税再延期を問う」でも問題多い日経 中山淳史編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_4.html
「内向く世界」をほぼ論じない日経 中山淳史編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_27.html
日経 中山淳史編集委員「トランプの米国(4)」に問題あり
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_24.html
ファイザーの研究開発費は「1兆円」? 日経 中山淳史氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post_16.html
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