小倉井筒屋(北九州市)※写真と本文は無関係です |
【日経への問い合わせ】
日本経済新聞社 富田美緒様 中村亮様
3日朝刊1面の「税収 世界で奪い合い 各国、企業誘致へ税率下げ 不均衡是正の動きも」という記事についてお尋ねします。記事には以下の記述があります。
「法人実効税率を比べると日本は第2次安倍政権発足後に36.99%から29.97%に低下した。英国は19%と10年で11ポイント引き下げた。税率の引き下げは自国企業の競争力を高めるためだが、低税率の国では外国から企業を誘致して税収を増やす狙いもある。メキシコは税優遇で米国向けに自動車などを製造する企業を誘致し、法人税収は2015年までの10年で4倍に増えた」
ここからは「メキシコ=低税率国」と読み取れます。記事には「低税率国の法人税収が伸びている」とのタイトルのグラフが付いており、この中でメキシコの伸びは他国(韓国、アイルランド、米国、日本)を圧倒しています。
しかし、OECDの資料で法人税の実効税率を見ると、メキシコは30.00%で日本(29.97%)をわずかに上回っています。OECD加盟国の中では五指に入る「高税率国」のようです。メキシコを「低税率国」に含めるのは誤りではありませんか。記事の説明で問題ないとすれば、その根拠も併せて教えてください。
グラフの「低税率国の法人税収が伸びている」との説明も成り立っていないと思えます。圧倒的に税収の伸びが大きいメキシコは、既に述べたように「低税率国」ではありません。
「2007年を100として指数化」した記事中のグラフで見ると、「税率を先進国最低水準の12.5%まで下げたアイルランド」は、税率がOECD加盟国で中位にある韓国の後塵を拝しています。2015年時点で高税率国の米国と比べても、アイルランドは指数でほぼ同水準にとどまっています。
グラフで取り上げた5カ国だけを見ても「低税率国の法人税収の伸びが大きく、高税率国の伸びが小さい」という傾向は読み取れません。「低税率国の法人税収が伸びている」とのタイトルは、控え目に言っても「読者に誤解を与える」と思えますが、いかがでしょうか。
御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティジャーナリズムを目指す新聞社として、掲げた旗に恥じない対応を心掛けてください。
◇ ◇ ◇
以上が問い合わせの中身だ。記事では「メキシコの税率は低い」と言い切っている訳ではないが、書き方からして「メキシコを低税率国に含めていない」とは考えにくい。不正確な解説だとは言ってよいだろう。
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「税収 世界で奪い合い 各国、企業誘致へ税率下げ 不均衡是正の動きも」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170903&ng=DGKKASGD27H7E_Y7A800C1MM8000
※記事の評価はD(問題あり)。富田美緒記者への評価は暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。中村亮記者への評価は暫定でDとする。冨田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
データの扱いが恣意的な日経「企業の現預金、世界で膨張」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_3.html
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